付録のグッズ目当てで普段買わない雑誌をついつい買ってしまう、そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
2000年代以降、主要なファッション雑誌はほぼ毎号で付録を付けて販売しています。
そんな雑誌付録ですが、トレンドやターゲットニーズをしっかりおさえているグッズや、これから話題になりそうなものを先取りしたグッズが付録になっていることもあります。
今回は、2021年上半期に登場した雑誌付録の中から、グッズ製作を企画するうえで参考になりそうなものをピックアップして考察していきたいと思います!
2021年上半期・雑誌の付録グッズ事例
ファッション雑誌やライフスタイル雑誌の付録といえば、エコバッグやポーチが定番というイメージが強いのではないでしょうか。
しかし今では、ブランドコラボアイテムやデザイン性の高いアイテム、実際に使ってみると想像以上に機能性が高いバッグ、ちょっと変わり種なグッズなどが付録になると、時にはSNSでの口コミを中心に話題になり、中には気に入った読者からは販売グッズでも買いたい!という声が寄せられることもあるほど、付録グッズが進化しているのです。
それでは、2021年上半期に発売された注目の雑誌付録を見ていきましょう!
ただのエコバッグやポーチじゃ終わらない!変わり種バッグ
再生PETエコバッグ
注目のサステナブル素材「再生PET」を使ったエコバッグ
「Oggi」2021年6月号付録
ファッションブランド「Theory」とコラボしたエコバッグの付録グッズ。今注目されている再生PET素材を使ったエコバッグが、雑誌の付録にも登場しました。
大人の女性が持ちやすいシンプルでおしゃれなデザインで、仕事帰りの買い物を想定した、便利な大容量サイズ。
サステナブルへの関心が高まった2020年には、多くの女性誌がSDGsを取り扱った特集を組み、サステナブル志向のライフスタイルを紙面で紹介していました。この「Oggi」の読者層である30代の働く女性は、仕事も私生活もバランスよく楽しめるライフスタイルに対して意欲的です。SDGsに対しても知識があり、関心も高いのが特徴。サステナブル市場でも最も注目されているターゲット層でもあります。
生活に無理なく取り入れやすいエコバッグやポーチに「再生PET」や「再生コットン」「ヴィーガンレザー」などのサステナブル素材を使うことで、30代女性への訴求力を上げることができます。
「Re: TEXTILE再生素材テキスタイル 対象アイテム」を見る
変身お買い物バッグ
エコバッグと肩掛けポシェットの2WAY仕様
広げればエコバッグに、たたんで肩掛けすればスマホとミニ財布が入るポシェットになる2WAYバッグ。
普段のお買い物バッグとして、アウトドアでの携行品入れとして、というコンセプトで付けられた付録グッズです。
この付録のついた「GLOW」の読者ターゲットは40~50代女性。はつらつとした生活を提案するファッション・美容・ライフスタイル雑誌で、この付録のついた号では、アウトドア特集が組まれています。男性層、ファミリー層、Z世代層に続いて、アウトドアブームはこの女性層にも広がっていることがわかります。
スタッフバッグ&刺繍ポーチ
底にマチのついた大容量スタッフバッグと刺繍ポーチのセット
スヌーピーコラボのスタッフバッグと、スヌーピーの刺繍があしらわれたポーチのセット。
スタッフバッグは筒状でマチ底になっていて、2Lのペットボトルも入る大容量サイズ。アウトドアシーンで活躍するアイテムとしても注目が高まっています。
バッグの開き口をくるくるたたんで閉じ、プラスチックバックルで止めて取っ手にします。ベルトバックルなので自転車にもひっかけられ、コンパクトにおりたたんで刺繍ポーチに収納できます。このスタッフバッグとほぼ同じ形状のバッグが、後述の男性読者の多いアウトドア雑誌「PEAKS」7月号の付録にもなっていました。
「steady」は20代女性をターゲットにしたファッション・ライフスタイル誌です。女性ターゲットの雑誌でスポーティーカジュアルなデザインのスタッフバッグが付録になるのは、レジャーやアウトドアなどアクティブなライフスタイルへの需要の表れかもしれません。
また、「steady」では7月号、7月増刊号、7月号特別号の3雑誌それぞれでスヌーピーコラボのスタッフバッグ、クリアボトル、ティッシュボックスケースの付録グッズを展開していました。
タイベック・フードコンテナ
1人用コッヘルやカップを収納するタイベック生地フードコンテナ
タイベック生地と止水ファスナーで耐水性の高いフードコンテナ。コッヘル(クッカー)やシェラカップ、食料を入れやすい斜め開口仕様で、優秀なアウトドアグッズになっています。耐水性があり、コンテナ内側からの液漏れも防げるので、ザックの中に入れても他のアイテムを汚してしまう心配もありません。
アウトドア・登山の専門誌「PEAKS」のターゲット層は男性。アウトドアブーム以前から、本格的な登山専門誌として発行されており、不定期にアウトドアグッズなどが付録についています。
今回ピックアップした5月号のフードコンテナのほか、7月号では「オリジナルドライバッグ」が付録に。こちらは先ほど紹介した女性ファッション誌「steady」のスタッフバッグとよく似た形状のもので、ターゲット層が全く違っても、活用の幅があるスタッフバッグは各誌で付録になっていることがわかります。
マイボトルも折りたたむ時代!
折りたためるシリコンボトル
折りたためて凍らせられるシリコンボトル
カラビナが付いた350mlのシリコンボトル。密封性があり、空になったら折りたたんでキャップをすればそのまま収納できる便利なボトル。レジャー・アウトドアグッズとして市販されているものも見かけますよね。
こちらは40代以上の女性をターゲットにしたライフスタイル誌でのアウトドア特集号の付録になっています。
男性ターゲットと思われがちだったアウトドアですが、近年のアウトドアブームはアクティブな女性のライフスタイルにも浸透しつつあることが、こういった付録グッズからも見えてきます。
メンズ雑誌のガジェット付録!
デジタルメモパッド
繰り返し書いて消せる、軽くてエコなデジタルメモパッド
手帳で知られる「デルフォニックス」が手掛けるドイツの文房具ブランドRollbahn(ロルバーン)とコラボした、8インチの液晶デジタルメモパッド。リチウム電池式で、書き味もなめらか。本体がとても軽いので、裏にマグネットシートを貼って冷蔵庫などに貼り付けることもできます。
メンズストリートファッション誌の「smart」は10代後半~20代男性が読者ターゲット。この号では、ロルバーンの手帳・ノート特集が掲載されており、アナログな手帳に手書きで書き込むことの魅力を紹介しながら、付録にはデジタルメモパッドを付けています。ターゲット層の年代はまさにZ世代。Z世代に広がるレトロブームやアナログ文化への憧れが反映された内容でもありました。
このほかにも女性ファッション誌、男性向けガジェット誌などの付録として同じようなデジタルメモパッドが付いていました。軽くて薄く、雑誌に封入しやすいことも、付録に選ばれやすい理由のひとつなのがわかります。
雑誌付録から見えるトレンドの変遷
付録に付けられるアイテムも、販売グッズと同じくターゲットニーズをおさえたものが採用されます。
ここで、これまでの雑誌と付録の変遷を簡単に解説していきます。
【2000年代後半】
多くのファッション誌に付録が毎号つくようになったのは2000年代後半。当時は渋谷・原宿を中心としたギャル文化の全盛期でした。ギャル雑誌に限らず、10~20代女性ファッション誌は全体的にメイクもファッションも派手めで強め。新進気鋭の人気ブランドが隆盛し、読者モデルにはカリスマ的な人気がありました。ブランドやメーカーコラボのメイクポーチ、メイクブラシ、アイシャドウ、人気読者モデルのプロデュースつけまつげやミラー、バッグ、アクセサリーなど、それまでにはなかったアイテムが盛んに付録グッズとなりました
【2010年代前半】
ギャル文化が落ち着いた2010年代以降は、雑誌にポーチや化粧品が付録に付くのが定番化していきます。付録になるグッズのバリエーションも広がり、定期刊行の雑誌とは別に、付録がメインになった単価の高い特別付録ムックや増刊ムックも増えてきました。
【2010年代後半】
デジタル化の影響で、雑誌自体の売り上げが下がり、特にファッション誌では廃刊・休刊が相次いだ2020年代後半。発刊を続けられた雑誌も、以前のような毎号付録をつける雑誌は減少傾向に。ファッションに限らず、総合的な情報を集めた各世代のライフスタイル誌では、実用性・機能性の高いトートバッグや生活雑貨の付録グッズを付ける傾向が多く見られました。多少価格が上がっても品質のよいグッズ・雑貨が求められるようになっていったのもこの頃からです。
【2020年以降】
新型コロナの影響もあり、2020年以降はそれまで付録で多かったトートバッグがエコバッグに、メイクポーチがマスクケースに、と付録になるグッズも時世を反映しました。同時に、空前のアウトドアブームの到来により、女性向けのライフスタイル誌でもアウトドアグッズが付録に付けられるようになりました。
雑誌付録でよく登場するグッズ
- 【バッグ系】エコバッグ・トートバッグ・サコッシュ・ショルダーバッグ・バッグインバッグ
- 【衛生グッズ系】マスク・マスクケース・消毒スプレーボトル
- 【メイク系】・メイクポーチ・クリアポーチ・メイクブラシ・ネイルシール・アイシャドウ・リップ・ミラー・基礎化粧品サンプル
- 【ドリンク系】クリアボトル・サーモボトル・ドリンクホルダー
- 【メンズアイテム系】ウォレット・コインケース・マルチケース・パスケース
- 【生活雑貨系】ティッシュケース・保冷バッグ・ハンディファン・皿・コースター・シリコン蓋・まな板
- 【文具系】ペンケース・手帳・手帳カバー・ノート・デジタルメモパッド
今ではあらゆるグッズが付録として付けられる可能性があります。2020年からはエコバッグ、マスク、マスクケースが新たにアイテムとして登場しました。今回紹介したエコバッグには、「再生PET」を使ったエコバッグもあり、再生コットンなどの再生素材を使ったグッズがまた登場するかもしれません。
まだ付録グッズの事例としては出ていませんが、近い将来にはマイバッグに続いて、マイストローやマイカトラリーが雑誌の付録として登場する日が来るかもしれません。
雑誌付録に見るトレンドのヒント
2021年上半期に発行された雑誌の中から、特徴的な付録のついたものをピックアップして解説してきました。
その付録の傾向には
- 一味違う要素のあるエコバッグ、スタッフバッグ
- 女性向けで、普段使いできるアウトドアグッズ
- 機能性・実用性の高いメンズ誌付録グッズ
という特徴が見られました。
その雑誌のターゲット層のニーズやトレンドを反映した付録グッズは、ターゲット層の求めるグッズを企画するうえでのヒントがたくさん詰まっていますよね。
現在、多くの付録グッズはその雑誌のターゲットに合ったブランドやIPとコラボを行っています。
付録は単に雑誌の売り上げを上げるためだけではなく、コラボするブランド側にとってもマーケティングの重要な施策となりえます。
化粧品のサンプル、新素材を使ったグッズなど、単体でゼロからのマーケティングが難しいものは、知名度の高い雑誌の付録でコラボすることでマーケットでの認知度が上がり、ユーザーに対してもテスターとして手に取ってもらえるメリットがあります。
昨今では雑誌の売り上げ数も、熱烈なファンのいるファッションブランドも、減少傾向にあります。しかしそれでも、トレンドの最先端の情報が集まる雑誌と、ターゲット読者のニーズをとらえた付録グッズからは、グッズやマーケティングの企画製作を行う上でのさまざまなヒントを得ることができます。
雑誌付録を参考に、トレンドの傾向をおさえながら、的確にターゲットに刺さるグッズの企画をしてみてはいかがでしょうか?
トランスでは、企画・マーケティングのアイデアのお手伝いもしております。
企画にお悩みの際は、弊社営業担当までお気軽にご相談ください!
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白峯アサコ
元・雑誌編集者、現・ライター。アニメ、漫画、サブカル、ファッション、美容、通信、鳥…なんでも書きます。その昔、買った雑誌の付録のメイクブラシが優秀すぎて2年ほどそのブラシを超えるブラシに巡り合えなかったのに、ほぼ同じ使い心地のものを100円ショップであっさり見つけたときの甘酸っぱい思い出がよみがえりました。