2040年には100兆円の市場規模になるといわれている宇宙ビジネス。宇宙ビジネスと聞くと、ロケットの打ち上げや製
造事業のイメージがありますが、実はそのジャンルは多岐に渡ります。事業内容はロケットの開発や運用の他、人工衛星からのデータを利用する技術開発や、旅行、エンターテインメントとすでに現時点でも様々なものがあります。
そこで本コラムでは今後巨大マーケットとなる可能性大の宇宙ビジネスというジャンルの中の「宇宙エンターテインメント」というジャンルに特化して、日本企業の取り組みをご紹介していきます。
宇宙エンタメとは
宇宙エンタメとは、宇宙とエンターテインメントを融合した、今後市場拡大を期待されている新たなジャンルのことです。
宇宙エンタメのジャンルは宇宙旅行、宇宙広告、宇宙コンテンツなど多岐に渡ります。
つい先日、アメリカ人の投資家など計4人からなる初めての民間団体客がISS(国際宇宙ステーション)に到着したとして話題になりました。一人あたり5,500万ドル(2022年4月現在で約68億円)を支払い、宇宙旅行は10日間の行程となっています。
(参照:https://news.livedoor.com/article/detail/21978453/?_clicked=social_reaction)
今まではどんなに金銭的に豊かであっても叶わなかった民間人の宇宙旅行は、今日では少なくとも経済的な面をクリアすれば可能であるというところまで実現しています。
このように刻一刻と宇宙エンタメ市場は拡大しつつあるマーケットとなっており、最近では日本の大手企業も参入し始めました。
今後は更なる飛躍が見込まれる新たな市場として、注目を集めています。
宇宙エンタメ市場拡大の背景
宇宙ビジネス市場は、20年後の2040年には世界規模で100兆円を超えると予測されています。
2016年時点では約36兆円の市場規模であるため、およそ3倍にも伸びるマーケットという試算です。
その理由として、かつては国家主導であった宇宙開発が民間主導に入り始めた転換期であることが挙げられます。
また、それに伴った技術の発達によりロケットや衛星等の打ち上げコストが低下し、通信衛星サービスや宇宙旅行などの宇宙エンタメ市場での伸長が見込まれているという背景があります。
宇宙エンタメ事業 取り組み事例
出展元:hhttps://www.spaceballoon.co.jp/project/
それでは日本企業の宇宙エンタメ市場進出について、具体的にご紹介していきましょう。
アストロフラッシュ
出展元:https://www.astroflash.co.jp/
株式会社ASTROFLASHは多くの人に宇宙を身近に感じてもらいたいという想いから、人工衛星の初号機「視覚で楽しむ衛星」の2022年中の打ち上げを目指しています。
これは世界中の都市に明るさが2等級以上の光を届けるという衛星で、地上から肉眼で見えるように運用されるとのことです。
ユーザーはその明るさや色をスマートフォンなどで操作しながらリアルタイムで楽しめるという、新しい形のエンターテインメントです。
アストロフラッシュでは、この「視覚で楽しむ衛星」の活用を通したPRをはじめ、衛星を利用したプロモーションなどのエンタメ事業拡大により宇宙産業の拡大と発展に貢献するとのことです。
参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000059937.html
岩谷技研
株式会社岩谷技研は2018年に温度や加速度変化に強い魚であるベタを乗せた気球を宇宙が見える高度25,000mまで上昇させ、安全に帰還したとして注目を浴びました。また、この際に行った宇宙撮影も話題を集めました。
この実験成功から、子供も乗ることができ、従来の宇宙旅行よりも安全という気球を使った「ふうせん宇宙旅行」プロジェクトを企画しています。
将来的には5名ほどの搭乗人数で、宇宙遊覧2時間を含む飛行時間4時間という宇宙旅行の実現を目指しているそうです。
このプロジェクトは高い評価を受け、内閣府主催の宇宙を活用したビジネスコンテスト「S-Booster」でも入賞しています。
参照:https://s-net.space/special/frontrunner/27.html
スペース・バルーン
出展元:https://www.spaceballoon.co.jp/
茨城県水戸市に本社を置く宇宙ベンチャーのスペース・バルーン株式会社は、宇宙と人類をつなぐことをコンセプトとし、比較的地表に近い成層圏領域を活用した新規事業の展開を計画しています。
人類未開拓の地である成層圏を拠点としながら、地表と宇宙をつなぐ宇宙港やバルーンでの宇宙旅行や成層圏スタジオからのSNS、TVなどのコンテンツを発信する等、新たな宇宙エンタメ事業展開の実現を目指しています。
アミュラポ
株式会社amulapo(アミュラポ)は、仮想現実を構築する新たな技術のXR(X Reality:クロスリアリティ)やロボット、AIなどの通信情報技術を駆使したコンテンツ開発に取り組んでいます。
具体的にはAR(Augmented Reality:拡張現実)を使用することで鳥取砂丘が月面都市に変わり、宇宙飛行士として都市を探索するというアクティビティ「月面極地探査実験A」や、宇宙船外の活動・船内実験等を通して宇宙飛行士としての試験を体験する「バーチャル宇宙飛行士選抜試験」等のコンテンツを制作しています。
SONY
出展元:https://first-flight.sony.com/pj/space-entertainment
ソニー株式会社は2020年に‘宇宙感動体験事業’を創出するとして「Sony Space Entertainment Project」を発表し、話題を集めました。このプロジェクトには東京大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も参画しており、映画やゲームなどのエンタメ事業に強いソニーと協働することで、新たに事業化を目指しています。
具体的にはソニー製のカメラを搭載した人工衛星を打ち上げ、地上にいるユーザーがリアルタイムで自由に遠隔操作できるサービスを提供するものです。
本物の宇宙映像での演出によるプロモーションやCM、リアルな宇宙を伝えるドキュメンタリー番組の製作など、今までにはないコンテンツ企画やサービスは2022年中に提供開始予定としています。
宇宙エンタメ事業をけん引する日本の企業の取り組み事例をご紹介してきましたが、現在この他にも多くの企業がすでに宇宙エンタメ事業に参入しています。
今後は更に賑わうマーケットになりそうです。
宇宙エンタメ市場は年々拡大中
宇宙エンタメ市場は年々拡大しており、成長規模が未知数のマーケットでもあります。
今後は機器のコスト低下に伴い、日本国内だけで宇宙ビジネス産業全体では2050年に約32兆円(2016年時点では約8兆円)、宇宙エンタメ市場だけでも現在はほとんど展開がないところから2050年には約2兆円に急成長すると予測されています。
科学技術の発展により宇宙が身近になり、宇宙を利用した旅行やアトラクション、アクティビティが特別なものではなく日常的に楽しめる日はそれほど遠い未来でもなさそうです。