「羅小黒戦記」「魔道祖師」「天官賜福」「陳情令」などを中心に、中国アニメ、中国BL、中国ドラマがこの1年で一気に日本で展開されはじめました。
すでに日本のアニメ品質に引けを取らない豪快なアクションシーンや美しい美術、巧みなストーリー描写。「中国アニメって、こんなにすごかったの?」と驚く人も多いでしょう。
世界ではすでに日本「Anime(アニメ)」と並んで、中国「ドンファー(動画)」としてアニメファンの心をつかんでいます。
注目すべき点は、これらは中国企業側が売り込んで広がったというより、日本のファンが日本語版を渇望したことで、日本企業側が働きかけて展開されているものが多いということです。
日本で徐々にファンが増えている中国アニメ、中国ドラマ。
「オタク消費」を牽引する女性ファンが熱狂するそのワケと魅力を中心に、今熱い、中国アニメ・中国ドラマ事情解説&考察していきます。
日本に進出する中国アニメ・中国ドラマ
現在、日本で放送・公開されている中国ドラマ、中国アニメの中でも特に人気のあるものをそれぞれ紹介していきます。
中国ドラマは、以前からBSやWOWOWで専門的に放送されているものもありましたが、原作・製作ともすべて中国産のアニメ作品が日本に本格的に輸入されたのは2021年から。
前後して、それらの中国アニメと同じ原作小説を元にしたドラマも2020年から日本で初放送され、動画配信サイトなど徐々に配信媒体が増えています。
日本に進出した代表的な中国アニメ・ドラマ(日本での公開時系列順)
- 羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来(アニメ映画)
- 日本での公開 2020年11月~(日本語吹き替え版)※
- 「陳情令」(ドラマ)
- 日本での初放送2020年3月~(日本語字幕版)
- 「魔道祖師」(アニメ)
- 日本での初放送2021年1月~(日本語吹き替え版)
- 「天官賜福」(アニメ)
- 日本での初放送2021年7月~(日本語吹き替え版)
- 「山河令」(ドラマ)
- 日本での初放送2021年8月~(日本語字幕版)
字幕版は2019年9月から一部映画館で上映されていた
「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」(アニメ映画)
羅小黒戦記(ロシャオヘイ戦記)は、もともと2011年からWEB上で公開されていたflashアニメです。
そのWEBアニメの前日譚のエピソードがアニメ映画として制作され、2019年に中国で劇場公開されました。
その後、日本の人気声優を起用した日本語吹き替え版が制作され、2020年11月より日本の映画館でも全国公開されたものです。
公開前から吹替声優を前面に押し出したテレビCMや日本版公式Twitterの運用を行い、精力的に宣伝を行っていました。
妖精と人間を中心にキャラクター同士の関係性の丁寧な描写とかわいらしいキャラクターデザイン、自然や街並みの流麗なアニメーション美術は、日本の既存のアニメ映画にはありそうでなかった作風でした。
その後本格的に日本に進出する「陳情令」や「魔道祖師」の視聴者にもファンは多く、同時に、中華コンテンツやBLにはあまり興味を持っていない層からのファンも獲得しました。
「魔道祖師」(アニメ)
墨香銅臭(ぼっこうどうしゅう/モーシャントンシウ)による同名のBL小説「魔道祖師(まどうそし)」を原作とするアニメ。
日本のファンには原作小説との区別で「あにそし」と呼ばれています。
中国国内ではテレビではなくWEB上での公開で、アニメ製作・配信ともにテンセントの各系列会社が手掛けています。
アニメ自体にはBL要素や同性愛的な表現は一切ありませんが、そういった表現に対して非常に厳しい規制のある中国でBL小説を原作としたアニメが作られること自体が画期的なことでした。
原作小説は(中国国内では内容的に発行できない事情から)繁体字版が台湾で発行されており、その後、英語版をはじめ韓国、タイ、ベトナム、ミャンマー、ハンガリー、ロシア、ブラジル各国で翻訳版小説が発行されました。
日本語翻訳版は2021年5月に発行されました。
この作品をきっかけに、世界中に中国のBL、アニメ、ドラマの熱烈なファンが急増しました。
日本語吹き替え版アニメは2021年1月からシーズン1、2が続けて放送されました(完結編となるシーズン3は中国で8月から配信が始まったばかりなので、日本語吹き替え版が観られるのはもう少しあとになる見込み)。
本作の内容は、中国古来の仙界を基にした幻想的な中華世界観で、大河ドラマ並みの複雑な人間関係を描いた群像劇。
美しいグラフィックながら悲劇的なエピソードも多いため、日本公式Twitterでは毎週のアニメ放送時に「#魔道祖師しんどい」タグをつけた感想ツイートを推奨しており、リアルタイム視聴を盛り上げていました。
「陳情令」(ドラマ)
タイトルは違いますが「陳情令(ちんじょうれい)」はアニメ「魔道祖師」と同じ原作小説の実写ドラマです。
こちらも製作・配信はテンセントの系列会社が手掛けています。中国では2019年6月から配信され、全50話と長編ドラマにも関わらず、大ヒットを記録。
アニメと同じく、原作のBL表現を深い絆の友情として描く「ブロマンス」として関係性を描いており、映画並みの華麗な衣装や撮影美術セットは「中華の伝統文化を非常によく表現した」として中国国内でも高く評価されました(このヒットにより、主演した2人の若手俳優・肖戦(シャオ・ジャン)と王一博(ワン・イーボー)は2019年にweiboランキングでトップ10入りし一躍スターとなりました。無名の新人に近かった他の出演俳優たちも、ドラマ放送後アイドル的な人気を獲得しています)。
韓国、タイ、インドネシアをはじめ、テンセントやYouTube、Vikiなど動画配信サービスを介して世界中で視聴されています。
日本語字幕版はWOWOWで2020年3月から放送され、その後U-NEXT、楽天TV、huluなど動画配信サービスでも視聴可能に。
アニメ「魔道祖師」日本語吹き替え版の放送に先立つ形で放送、配信されたことで「陳情令」をきっかけに中国ドラマ・アニメにハマったという人も多くいます。
公開時期は未定ですが、このドラマの日本語吹き替え版の製作が決定したというリリースもあり、吹き替え版が出れば、ますます注目が集まるだろうと考えられます。
「天官賜福」(アニメ)
「天官賜福(てんかんしふく)」は、こちらも「魔道祖師」と同じく墨香銅臭によるBL小説が原作のアニメです。
ただし、製作・配信は別の会社で、製作・配信はbilibili※(ビリビリ)が手掛けています。
こちらも仙界をイメージした架空の古代中国が舞台の、ファンタジー作品。中国では2020年から2021年2月まで配信され、日本では2021年7月から日本語吹き替え版が放送開始しています。
「魔道祖師」と並び立って、日本での中華コンテンツ人気を牽引するアニメとして期待されており、日本での製作を手掛けるアニプレックスからは、日本版オリジナルでのグッズ製作・販売が予定されています。
「魔道祖師」と同じく、こちらも中国で実写ドラマの製作が予定されており、7月末には俳優たちが撮影クランクインしたというニュースが、ファンの間で話題になっていました。
原作からのアニメ・ドラマ・ラジオドラマCDやコミカライズなどのメディアミックス、コラボカフェやブランドコラボが展開されている「魔道祖師」コンテンツの成功をきっかけに、中国国内でもビジネスとして非常に期待されていることが伺えます。
(※bilibili:中国の動画共有サイトやコンテンツを手掛ける企業。中国版ニコニコ動画とも呼ばれる)
「山河令」(ドラマ)
「山河令(さんがれい)」は、「魔道祖師」とは別の作家Priest(プリースト)によるBL小説「天涯客」が原作となった実写ドラマ。
「陳情令」と同じく、ブロマンスとして描かれ、ジャンルとしては“ブロマンス武侠ドラマ” ※とされています。
2021年2月に中国の動画配信サービスYouku(优酷网)で配信されると、その評価・人気は先発の「陳情令」をしのぐほどに。
こちらも、韓国・アメリカ・オーストラリアなどでも配信され、日本では2021年8月からWOWOWで日本語字幕版が放送開始しています。
陳情令と同じく、こちらもドラマのヒットで主演した2人の俳優・張哲瀚(チャン・ジャーハン)と龔俊(ゴン・ジュン)は一躍、国民的スター俳優に。
また、このドラマの日本公式Twitterでは、毎週の放送時に「#山河令登山中」のハッシュタグを推奨しており、放送前後にはハッシュタグをつけた視聴者の感想ツイートを見ることができます。
余談ですが、この作品の原作者による他作品「有翡(ヨウフェイ※)」も、すでに中国では実写ドラマ化されています。(日本での放送・配信予定は今のところありません。)
武侠(ぶきょう):中国での時代劇ジャンルのひとつ。武術に長け、義理を重んじる主人公や人物を中心に描かれる。日本の時代劇や任侠ものに近いイメージで、武術アクションも多く描かれる。
日本未進出作品のため、カタカナ読みは筆者の推測での表記です。
人気の秘密は「ブロマンス」
これらの作品の多くに当てはまる人気のポイントはBL(ボーイズラブ)小説を原作にした耽美なビジュアルと幻想的な中華世界観であることです。
唐代や宋代の伝統的な古代中国をベースにした幻想的な世界観や美術、そして眉目秀麗な若手のイケメン俳優たち。
先述のように、「陳情令」や「山河令」などのブロマンスドラマは、その伝統文化の表現の美しさが、中国国内でも高く評価され、それが中国国内外でのヒットに結び付いたとも言えます。
BL表現やセクシャルな表現に対して厳しい規制のある中国。中国の制作会社や配信会社はドラマ製作にあたり、そういったBL表現を固い絆で結ばれた男性同士の物語「ブロマンス(ブラザーロマンス)」として置き換えて表現しました。
直接的な描写ができない分、巧みな「匂わせ」捉えようによっては雅で文学的な表現となったことで、広い年齢層の女性ファンから支持を得ました。
文章や映像での表現に対して、「匂わせ」るような余白や行間を読み、深読みや想像を膨らませる鑑賞方法を楽しむ、いわゆる「腐女子」「貴腐人」と呼ばれる日本のBL作品ファンのニーズに、上記のような中国ドラマ、中国アニメがすっぽりとハマったともいえます。
2021年9月、中国でエンターテイメントに対する規制強化が始まり、中国国内のアイドルや俳優の挙動に加え、ボーイズラブへの規制も強化されたと報道がありました(しかし、元々中国ではボーイズラブに対しては厳しい規制があり、それを承知で楽しんでいた中国のファンの多くは今回の規制強化にそこまで動揺していない、という意見も耳にします)。
アプリゲームに対する規制も強まり、大手ゲームメーカーのネットイースやテンセントは新規タイトルのローンチが止まっている状況で、中国ドラマや中国アニメがもう日本に入ってこないのでは、と不安に思うファンの声も聞こえてきています。
しかし、すでに中国の外に輸出されて放送・出版されている作品についてはそこまで規制がかかることはないでしょう。
今日本で知られている中国コンテンツは、今回の規制強化より前から規制の厳しい中国で放送・配信できていた作品なので、全てが取り締まりの対象になるわけではない、と考えられます。
中国アニメの上陸を待ち望んだ日本のファン
日本のファンが急増している中国アニメ、中国ドラマですが、これらのマーケティングについて注目すべき点があります。
それは、中国のIP企業が積極的なマーケティングをしたというより、日本側のファンが熱望して上陸が実現した面が強いということ。
今日本のアプリゲーム市場を席巻している中国発アプリゲームの売り込み方とは違い、中国発であることを前提にファンがついていることがポイントです。
先ほど紹介した作品の多くは、日本以外の国ではすでに翻訳版書籍の発売や英語字幕版の配信が行われていました。
すでにアジア、欧米では熱烈なファンを獲得していた作品ですが、日本への本格的な上陸が始まったのはこの1年ほどのことです。
アニメ「魔道祖師」の日本語吹き替え版やドラマ「陳情令」の字幕版放送は、当時すでに中国・アジアでは熱狂的なファンがいた作品の魅力を知った日本人プロデューサーが、日本にも輸入できないか中国の版権元に働きかけたのが始まりだったそうです(これは日本語版プロデューサーのメイキングインタビュー内でも語られています)。
作家ファン化・俳優ファン化の相乗効果
「魔道祖師」とそのドラマ版「陳情令」や「天官賜福」の原作小説は、ともに中国の同人小説作家・墨香銅臭によるものです。
作品のファンは、1つの作品にハマると、同じ原作者の他の作品も観たくなってくるもの。
「魔道祖師」と「陳情令」で原作小説を知り、同じ作家の別作品にもファンは興味を持ち始めます。
「魔道祖師」の日本語吹き替え版アニメの放送が始まり、後追いのする形で原作小説の日本語翻訳版が発行されました。
日本語版小説は発売直後から売り切れが続出し、重版が決定(BL小説ジャンルでは近年まれにみる異例のヒットと言われています)。
その後、知名度が上がってきたタイミングで「天官賜福」の日本語吹き替え版放送が決定しました。
ファンの熱量が下がらないうちに一気に畳みかけるように連続してリリースし、Twitterの日本公式アカウントも活発に動いたことで、Twitterトレンドにも毎週キーワードが登場するようになりました(Twitter公式アカウントではアニメやドラマの感想をつぶやいてもらうため、魔道祖師では「#魔道祖師しんどい」、山河令では「#山河令登山中」など、ハッシュタグを推奨したことで、放送前後はタグがトレンド入りするようになっていました)。
これにより、それ以前はややマニアックな「中華ものファン」のものとしか知られていなかった上記のアニメコンテンツが、2021年上半期から夏にかけて若い女性層にも一気に知名度を広げました。
中国ドラマの場合も同じで、「陳情令」を視聴したことがきっかけで出演俳優や中国ブロマンスファンタジーというドラマジャンルのファンになった人が多く見られます。
お気に入りの俳優の他出演作や、同じジャンルの他のドラマを観るようなるのは、BBCやFOX、韓流などほかの海外ドラマや洋画ファンにも見られる傾向です。
消費額の高いファン層が中国アニメ・中国ドラマへ流入
そして注目すべきもう1点が、オタク消費額の多いファン層がこの中華BL・ブロマンスに流入している点です。
中国アニメ、中国ドラマの女性ファンに多い「腐女子」「貴腐人」などと呼ばれるBLファンの女性は、日本のマーケットで注目されている「オタク消費」を牽引する重要な存在です。
ファンの年齢層で違いはありますが、30~40代女性ファンは消費額が高くなる傾向があります。
2.5次元舞台、全国ライブツアー、アニメのオーケストラコンサート(オケコン)鑑賞とそれに伴う旅費、フィギュアやアクスタ、画集、Blu-ray BOX購入なども盛んに行い、高額商品であっても品質に納得すれば迷わず購入する、消費額の高い推し活を行います。
かつては日本のアニメに対してもそういった推し活を盛んに行っていましたが、現在、中国アニメ・中国ドラマの中に、そういったオタク消費額の高いファン層の琴線に触れる作品が増えてきており、中国アニメにファンが流れている点に留意しておくべきでしょう。
中国コンテンツ、これからの展開は…?
中国での規制強化を受け、中国コンテンツの日本での今後の展開を不安視する声も上がっています。
規制の中には「ファン同士で集金して行う過度な推し活」「私設ファンクラブ活動やアイドルや俳優のランキング付け」などを禁止する動きがあり、中国国内で人気のアイドルオーディション番組も禁止になると言われています。
これを「推し活禁止」と捉えて不安に思っている人も多いようです。
しかし、元々規制を潜り抜けて中国国内で展開できていたコンテンツがいきなり日本に入ってこなくなることはないでしょう。
推しコンテンツや推しの俳優本人のイメージを損なうような過度な行動でなければ、日本国内での推し活には支障はないと考察します。
中国発アプリゲーム事情
一方、中国発のアプリゲームは、中国アニメや中国ドラマとは違い、すでに何年も前から日本市場に進出し、日本のアプリゲーム市場に浸透しています。
東京ゲームショウなどの大型コンベンションへの出展、ファンイベント、企業コラボキャンペーン、TVCM放送、各種グッズ展開、日本のコンテンツと変わらないコンテンツマーケティングが展開されているタイトルが数多く存在します。
そんな中国アプリゲームのメーカーにはテンセント・ネットイース・Happy Elements・miHoYo・Yostarなどが挙げられます。
【日本で人気の中国発アプリゲーム例】
- 荒野行動
- あんさんぶるスターズ!
- アズールレーン(ファン略称:アズレン)
- IdentityV 第五人格(ファン略称:ててご)
- 原神
- 陰陽師本格幻想RPG
これらのアプリゲームは、女性ファンが多く字幕であってもファンは受け入れてくれる中国アニメ・ドラマとは売り出し方も展開の仕方も違います。
「中国発」であることをあまり前面に出さない、日本人声優によるフルボイス起用など、日本でのコンテンツ展開を前提としたマーケティング戦略が特徴です。
さらに質の高いゲーム性、魅力的なデザインのキャラクターイラストによって、日本のアプリゲーム市場を席捲しています。
1つのアプリゲームに1億円を超える巨額の開発費を投じたスマホ用アプリゲームの上陸に、日本のゲームメーカーは強い危機感を持っている、とも報じられています(テンセントやネットイースは中国最大手のゲームメーカーですが、Happy ElementsやmiHoYo、Yostarなどは中国国内のゲームメーカー売り上げランキングでは上位20位にも入っていません)。
そんな中で2021年9月に報道された中国の規制強化では、主に上記のようなアプリゲームも一部規制対象になると考えられています。
ユーザーによる過度なアプリ課金(重課金)やスマホ依存、都市部の若者の引きこもりが中国でも深刻な社会問題となっており、今回の規制では、未成年のアプリゲームプレイ時間の制限などが行われるようです。
少なくとも日本で日本語版アプリゲームをプレイする日本のユーザーには、直接的な影響は今のところないでしょう。
しかし、ゲームメーカーのテンセントやネットイースに対して厳しい規制がかかる場合、同タイトルの新規コンテンツ配信が滞るのではないか…という懸念はファンの間で広がっています。
海賊版との闘い!中国キャラグッズ事情
中国アニメのキャラグッズを調べると、公式グッズを探すのが難しいほど、ネット上には海賊版や偽物グッズがあふれかえっています(たとえAmazonプライム商品であっても公式グッズとは限らないので、よく調べる必要があります)。
海賊版グッズをうっかりつかまされる経験がほとんどない日本のファンは、それらの作品の公式グッズを購入する際に戸惑っているのが現状です。
日本限定の公式グッズ製作が実現すれば、日本の中国アニメファンはもっと安心してグッズを集められるのではないでしょうか。
クリアしなければいけない問題はおそらく多いですが、グッズ製作企画の可能性が広がるチャンスだと考えられます。
もし製作できるならどんなグッズが好まれる?
では、もし日本で日本限定の中国アニメグッズを製作できるならどんなグッズがいいのかを考えてみましょう。
現在中国で展開されているグッズは、今のところキャラクターイラストを使ったいわゆるキャラグッズが多いようです。
しかし日本ではファンの世代が20~40代と幅広いため、あえて日本でグッズ展開をするなら、やや高級志向でスマートなデザインのグッズが好まれるのではないかと考察します。
「魔道祖師」や「天官賜福」のような中華アニメの日本での人気のポイントは、その幻想的な世界観や美術。
唐代や宋代に隆盛した伝統的な中華様式の美術や花模様などを取り入れた装束、持ち物が魅力です。
雲模様や流水模様、水墨画
青龍・白虎・朱雀・玄武などの霊獣
作中でもたびたび登場する蓮花、芍薬、牡丹などの花
これらをモチーフにしたスマホケース、ハンカチ、文具、アクセサリーや食器など、品の良いデザインのグッズが喜ばれるのではないでしょうか。
また、ファンが中華コンテンツに対して魅力を感じるものには、食・喫茶などの生活風俗の伝統文化も大きな要素です。
茶器や香炉、扇子、中華傘やデザイン性に優れた高級食器
なども、作品公式のグッズとして可能性があるのではないかと、考察します。
チャイボーグメイク・中華コスメ・漢服…中華ファンに刺さるもののヒント
今、Z世代を含めた20~30代に人気のある中国発のトレンドの中には、色白肌に紅色のアイカラー、真っ赤なリップに黒髪の、CGや人形のようなメイク「チャイボーグメイク」ズーシーや花西子などデコラティブな装丁と華やかな発色が人気の「中華コスメブランド」コスプレ感覚で着てみたいという人が多く、プチプラ通販で手に入る仙女のような「漢服コスチューム」などが挙げられます。
いずれも共通して言えるのは、ちょっと非現実で幻想的なビジュアルであること。
中華ファンの多くが憧れる中華のイメージは、実際の中国というより、幻想的で耽美でミステリアスな古代中華のイメージです。
今、日本のマーケットでは「オタク消費」が注目されていますが、直接的なアニメグッズだけではなく、間接的にアニメの世界感やキャラを連想できるコスメ商品やファッションも「オタク消費」の対象となっていることです。
推し活に含まれる「推しコーデファッション」や「推しの概念アクセサリー」を身につけたいファンにとって、こういった中華コスメやファッションも推しグッズとなります。
これらのトレンドをヒントに、中国アニメをはじめとする中華コンテンツへの理解を深めておくことで、今後のキャラクターグッズ企画製作のヒントが見つかるのではないでしょうか。
白峯アサコ
正直、自分が中国アニメやドラマの沼にハマるなんてほんの1年前は考えてませんでした。
せっかく沼にハマったんだしと、ズブズブと底のほうまで沈んでみようと思いましたが、沼があまりに深すぎて、いまだに底が見えません。それでもいろいろ理解を深めたくなり、仙人思想や道教思想の本なども読み漁りはじめました。楽しいです(オタクにありがちムーブメント)。