最近、急に耳にするようになったキーワード「メタバース」。Facebookが「Meta」と社名を変えて本格参入するなど、今メタバースが急速にビジネスのトレンドになっています。
「メタバース」は新しい概念ですので、まだピンと来ていないという人も多いのではないでしょうか。
メタバースとはどんなもので何ができるのか、そしてビジネスでは現在どんな活用例があるのか。
あらゆるビジネスで注目される「メタバース」について、その概要と事例をご紹介していきます。
メタバースとは
「メタバース」とは、インターネット上にある3次元の仮想空間という定義が一般的です。
「超越」を表す「メタ」と「宇宙」の意の「ユニバース」を合わせた造語で、現時点ではまだ定義がはっきりしておらず、いろいろな定義があります。
それでも共通して広く言われている定義は、他のユーザーと交流したり空間を共有したりできる点が挙げられます。
既存の仮想現実空間の具体例としては、
大人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」のような仮想空間のオープンワールドで遊ぶゲームや、2010年前後に話題となった「セカンドライフ」などが挙げられるでしょう。
どちらも数多くの人とコミュニケーションでき、その中だけで使える通貨や物品のやりとりができる仮想空間です。
しかし、必ずしも他者を必要とはせず、ゲームとして一人でプレイして完結することもできました。
メタバースとこれらのゲームや既存の仮想現実空間との違いは、他者も存在するのが前提の仮想現実空間であることでしょう。
さらに「メタ」というからには、さまざまな世界・空間がその中に存在していなければならないという声もあります。
多数の仮想空間の間を行き来できるかどうかが大切だという考え方です。
いずれにせよ、メタバースは
他者とコミュニケーションを取りながら、現実世界とは別の世界での生活を楽しむことができるのです。
メタバースでできること
他のユーザーとの交流・空間の共有ができるという最大の特徴により、メタバースではいろいろなことが可能になっています。
1ユーザーとして個人で楽しむなら、他のユーザーとのコミュニケーション・仮想空間内の探索・ゲーム・バーチャルライブへの参加・アート展示などができます。
ビジネスにおいてもさまざまなことが可能です。分かりやすいところではバーチャルオフィス・リモート会議・セミナーなどが挙げられます。カメラを使ったオンラインの会議ツールより、メタバースを利用した会議の方が自然だとよくいわれます。
また商業活動ができるため、ビジネス上の大きなアドバンテージとなっています。すでに個人と企業の両方によって、デジタルコンテンツや仮想空間内の土地・現実の商品などがメタバース内で売買されています。
これまでの仮想現実空間(バーチャル空間)との違い
これまでの仮想現実空間(バーチャル空間)と異なるメタバースならではの特徴は、他者と交流できる点・空間を共有できる点、現実世界とリンクした社会活動が行える点です。
これまでのバーチャル空間は「現実のような空間を体験できる場」であることが主題だったので、そこに他者(ほかのユーザー)が存在するかどうかはあまり関係ありませんでした。
また「さまざまな世界が並列して存在している」「リアルの空間も含め多数の空間の集合体になっている」という点も違いとしてよく指摘されます。この定義に則ると、現在「メタバース」と呼ばれているサービスもメタバースではなくなる場合もあります。
上記の特徴も含め、よく挙げられるメタバースならではの特徴をまとめます。
- 他者と交流したり空間を共有したりできる
- 多数の空間の集合体になっている
- 大人数が参加できる
- アバターを使って参加する
- 自分のスペースやオブジェクト・アイテムを創造することができる
メタバースが注目されている理由
名だたる企業がメタバースへの参入や投資を決めており、メタバースが注目されるきっかけとなっています。
例えばFacebookやMicrosoftはメタバースのサービスやツールの開発を進めています。日本のGREEもメタバース参入へ意欲的です。そしてNTTドコモやKDDI・講談社・ソフトバンクなど多くの企業が、メタバースに関わる国内外の企業に出資しています。
このように、世界でも日本国内でも大手企業が次々とメタバースへの参入・投資を行っていることから、ビジネスにおけるメタバースへの期待値の高さが伺えます。
また、仮想通貨やNFTはメタバースとの親和性が高く、メタバースの広がりを後押ししています。NFTによりデジタルデータも偽造・複製ができなくなり、メタバース内での活動や制作物が安心して取引できるようになりました。そして仮想通貨がその売買に用いられます。
2021年3月にはNFT技術を用いたデジタルアートが75億円で落札された事例があり、美術界に激震が走りました。
今後はこうしたNFTを用いた経済活動が、メタバース上でも行われるようになるのではないか、と期待を持つ声も見かけられます。
今はまだメタバース上で上記のようなNFTでの取引での大きな事例は報告されていませんが、メタバースに対する大きな期待を生み、次のブルーオーシャンとして注目を集めているのは確かでしょう。
メタバース関連サービスの事例紹介
現在存在しているメタバース関連サービスには、次のような種類があります。
- メタバースの場となるプラットフォーム
- リアル・デジタル両方の商品販売・体験向けのスペース
- アバター作成サービス
- コンサルティング
- ゲーム(MMORPGなど)
この記事では、具体的な事例として次のサービスや企業をご紹介します。
- VR法人HIKKY
- バーチャルマーケット
- 三越伊勢丹 REV WORLDS
- cluster
- 渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト
- SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland
- AVATARIUM(アバタリウム)
この記事では、具体的な事例として次のサービスや企業をご紹介します。
VR法人HIKKY
「VR法人HIKKY」は、メタバースに取り組みたい企業へのコンサルティングやサポートを提供し、次項で紹介するサービス「バーチャルマーケット」を運営する会社です。
具体的には、以下のようなサービスを提供しています。
- バーチャル上で行われるマーケットフェスティバル「バーチャルマーケット」の企画・運営
- VRソリューションの戦略・施策設計
- システム設計・開発
- 運用・サポート
具体的には、VRを用いた新規事業や販促の提案・サポート、VR空間でのバーチャルライブやECサイトの提供などを行っています。有名企業のVR事業も数多く手掛けており、VR空間での店舗やシアター・アトラクションに加えて、新車の試乗や国際的な学会の開催などの実績があります。
公式サイトで問い合わせを受け付けています。料金やより具体的なサービス内容については直接お問い合わせください。
バーチャルマーケット
引用元:https://winter2021.vket.com/
「バーチャルマーケット」は、バーチャル空間最大級のマーケットフェスティバルです。上述のVR法人HIKKYが企画・運営しています。2018年にスタート・今までに7回の実績があり、直近では2021年12月に開催されました。出展ブース数などで、過去に2回ギネスの世界記録に認定されています。
会場では展示された3Dアバターや3Dモデルなどを自由に試着・鑑賞・購入することができます。その他、アートや研究成果の発表・トークセッションの配信などもあります。VRChat(PC版・Oculus Quest版)、Webブラウザ・スマホから無料で入場が可能です(入り方により入場できる範囲に違いあり)。
来場者の7~8割が日本国外からのアクセスで、国際的なイベントになっています。
個人サークルに加えて有名企業も出展していますが、ほとんどが個人やサークルの出展です。バーチャルマーケット2021の出展費用は、出展ワールドによって1,100円・3,300円の2種類で、金額面でも出展しやすくなっています。
三越伊勢丹 REV WORLDS
引用元:https://www.rev-worlds.com/
「REV WORLDS」は、新宿東口周辺の一部エリアと伊勢丹新宿店が再現された仮想空間です。三越伊勢丹によるコミュニケーションプラットフォームであり、仮想空間内の伊勢丹新宿店で買い物もできる購入の場でもあります。スマホ向けアプリをインストールすれば無料で利用できます。
気に入った商品があれば、アプリ上から三越伊勢丹オンラインストア等へ遷移して、実際の商品を購入することが可能です。実在するスタッフのアバターによるオンライン接客もあります。期間限定のポップアップショップなど、イベントも随時実施。ユーザーは、チャット機能を使って他のユーザーと会話を楽しむこともできます。知人と待ち合わせして一緒にショッピング、などということも可能です。
リアルでは不可能な店舗の貸し切りができるなど、バーチャルならではの機能もあります。
cluster
「cluster」は、クラスター株式会社が運営する国内最大級のメタバースプラットフォームです。バーチャルイベント会場やユーザー同士の交流空間として活用することが可能で、「バーチャルSNS」ともいわれています。サービスの利用は、スマホ・PC(Oculus・VIVE)用のアプリを通じて行います。もちろん無料です。
具体的には、個人や企業の作ったワールドに行ったり、そこで出会った人とコミュニケーションを取ったり遊んだりすることができます。ライブなどイベントに参加したり、自分で開催したりすることもできます。自分でワールドを作ることも可能です。
法人がイベント開催やワールドの公開を行う場合は、事前に相談が必要です。
(参考までに、公式サイトにはイベント開催にかかる費用は100万円から応相談とあります。)
すべての人がcluster上で自由な経済活動を行えるようなサービス開発の促進・「メタバース研究所」の設立など、メタバースの普及に尽力しています。
渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト
「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」は、テクノロジーを駆使して渋谷の街をアップデートしていくプロジェクトです。上記のcluster内に再現した渋谷の街「バーチャル渋谷」を、渋谷区公認で運営しています。KDDI株式会社・一般社団法人渋谷未来デザイン・一般財団法人渋谷区観光協会の3団体・企業を中心に、現在は70以上の企業・団体が参画しています。
バーチャル渋谷はcluster同様の利用環境(スマホ、PC(Oculus・VIVE)用アプリから利用)があれば訪問が可能。もちろん無料です。コラボイベントも実施しています。過去には攻殻機動隊、名探偵コナンなどとのコラボイベントがありました。行われているイベントに参加したり、街歩きをしたりすることができます。
プロジェクトや取り組みへの問い合わせは、公式サイトで随時受け付けています。
SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland
引用元:https://v-fes.sanrio.co.jp/#
「SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland」は、サンリオ初のバーチャル音楽イベントです。仮想のピューロランドにて、2021年12月11日・12日の2日にわたって開催されました。VRchat、DOOR、SPWN(それぞれPCかスマホ)の中から選択して参加・観覧することが可能でした。
AKB48(Team8)やKizuna AI などリアルのアーティストとバーチャルのアーティストが多数出演。さらにサンリオのキャラクターも登場・出没し、空間を盛り上げました。
会場となった仮想のピューロランドにはいくつかのフロアがあり、ライブフロアは有料(入場のプラットフォームによって、入場できるエリアと価格が異なる)、クラブフロアは無料で楽しむことができました。コミュニケーション向けのチルパークも用意され、感想をシェアし合ったり、サウナでゆったりしたり、なんて楽しみ方も。ミニステージでのライブやミニアトラクションや、ショップでの限定オリジナルグッズの販売もありました。今後も開催されることが期待されます。
AVATARIUM(アバタリウム)
「AVATARIUM(アバタリウム)」は、顔写真をもとにオリジナルのリアルな3Dアバターが作成できるプラットフォームです。スマホアプリを通して作成します。運営は株式会社Pocket RD。スクウェア・エニックス、KDDI、講談社、大日本印刷と資本業務提携したことで話題にもなりました。
アバターはアレンジ・カスタマイズすることができ、リアルなアバターをキャラクター化したり、メイクアップやアイテム装着したりすることも可能。作成したアバターは前述のプラットフォームclusterでも使用できます。同じくcluster内でバーチャル渋谷を運営する渋谷5Gともイベントを行ったことも。
会員登録とアプリのインストール・アバター作成は無料ですが、登録後翌々月1日から月額費用(税込600円)がかかります。退会はアプリのアンインストールでなく、退会手続きが必要です。FBX・VRMの出力は格安の6,000円、アバターアイテムの購入も有料です。
メタバースの今後の展望
メタバースはユーザー・企業どちらの側面から見ても将来に期待が寄せられる魅力があります。
ここではビジネス面でのメタバースの展望をまとめていきましょう。
現時点では次のメリットが得られると考えられます。
- ビジネスチャンスが増える
- コストカットが図れる
メタバースはマーケティングの上でも、今後の展望に大きな可能性を秘めています。
具体的には、バーチャル空間での商品販売、販路の拡大、新たな商品開発などが考えられます。
バーチャル空間なら、オンラインショッピングにおいても、今までは難しかった、より立体的なプロモーションが可能かもしれません。商品の見せ方の幅が広がるでしょう。今後、よりメタバースが一般的に普及していけば、メタバース上でのみ発生する需要に対する新しいサービス商品も生まれてくるでしょう。
すでに新しい購買パターンも生まれつつあります。旅行先でお土産を買うように、オンラインのイベントの思い出に商品を買うことなどです。これはデジタル・リアルの商品を問いません。今後はバーチャルとリアルの両方で購入活動を楽しむようになっていくと予想されます。
メタバースを活用すれば、実店舗の代わりに仮想現実空間で店舗やショーケースを設置して販売できますし、D2Cで購入者に商品を届けることになるでしょう。
マーケティングで注目されている、売らない店舗「ショールーミング」との親和性も高いでしょう。メタバースを活用した商品の販売・提供ではバーチャルの楽しさを壊さない、配送における「体験価値の仕掛け」が今後重要になると考えられます。
ショールーミングでの販売手法と同様で、メタバース上でユーザーが見て購入した商品を、現実世界でユーザーの手元に届ける際には、そこに付加価値や体験価値を付ける必要が出てくるのではないかと予想します。
商品の梱包資材やラッピングなどに仕掛けや工夫を入れる、などバーチャルとリアルの連動性を演出できる販売方法を考えていくことになるのではないでしょうか。
まとめ
NFTや仮想通貨などの新しい技術の開発、進化により、メタバースは今後ますます発展していくことでしょう。
ビジネス面での大きなチャンスを秘めており、今後ますます存在感を増していくと考えられます。
バーチャル空間での施策に目がいきがちですが、メタバースはリアルとバーチャルを行き来するもの。
リアルの施策も忘れることなくビジネスに取り入れていきましょう。