近年海洋ゴミが世界的な問題となっており、プラスチックゴミを減らす取り組みは積極的に行われるようになりました。
プラスチックゴミに注目が集まる一方で、廃棄された漁網やロープについてはあまり言及されていないという現状があります。ゴミ化した漁網は「ゴーストギア」と呼ばれ、長い時間にわたって海水を漂い続けます。この結果、多くの海洋生物が廃棄漁網に絡まり身動きが取れなくなり、命を落とすこともあります。
このコラムでは、廃棄漁網をリサイクルするためのしくみ作りに尽力する企業の取り組みや、漁網をリサイクルしたグッズをご紹介していきます。
海岸に漂着する海洋ごみの4割は廃棄漁網
引用元:https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4452.html
近年、海洋ごみが早急に対処すべき課題として世界的に問題視されています。環境省によると、日本国内の海洋ごみのうち、約4割強が漁網であることがわかっています。漁網は重くかさばるため、処分するのにも高い運搬コストが必要であること、いろいろな素材から構成されることから分別が難しいということも理由として考えられています。
廃棄された漁網「ゴーストギア」が長時間海を漂流した場合には、素材がより細かくなりマイクロプラスチック化するため、海洋生物だけでなくそれを捕食する人間の体内にもプラスチックが蓄積していく恐れがあります。
そこで、この深刻な海洋汚染がこれ以上広がらないよう、海洋ごみを減らしリサイクル製品化を進めようと努める企業の取り組みからご紹介していきます。
ALLIANCE FOR THE BLUE
引用元:https://www.alliancefortheblue.org/
一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUE(アライアンス・フォー・ザ・ブルー)は、海洋ごみ削減に向けた消費者が参加しやすい取り組みや経済のしくみが国内では少ないということや、海洋ごみの問題解決に協働できる場そのものが少ないことを問題視し、それらを解決するためのハブの役割を持つ機関として設立しました。
活動内容
ALLIANCE FOR THE BLUEでは、主に次のような活動を中心に行っています。
- 海洋ゴミ問題に関する国内外の情報収集・提供等
- 海洋環境への負荷を減らすための商品企画・開発支援
- 海の豊かさを守る商品・サービスの証である「Product for the Blue」マークの普及
- 消費者・企業を含めた社会全体の海洋環境保全への意識向上を促すための教材・体験の提供 など
なかなか日本で把握することが難しい世界各国での取り組み状況の共有や、海洋ゴミを削減しようという企業同士が協働できるコミュニティの場を提供しています。
(参照:https://www.alliancefortheblue.org/#action)
参加企業
企業と生活者の共創による、海の豊かさを守る商品づくりと持続可能な仕組みづくりを実践することにより、めぐみ豊かな海を次世代に引き継ぐことを目的としています。
川崎重工株式会社、コクヨ株式会社、株式会社セブン&アイHLDGS、大日本印刷株式会社など様々なジャンルにわたる大手企業が数多く参加しています。
漁網リサイクルグッズのご紹介
続いては、廃棄漁網を使った様々なリサイクルグッズをご紹介していきます。
バッグ(豊岡鞄)
引用元:https://toyooka-kaban.jp/exhibition2022ss/product-for-the-blue/
ALLIANCE FOR THE BLUEでも協働している豊岡鞄は、廃棄漁網を再生した素材を使ったバッグを販売しています。
トート、ボストン、ショルダーなどデザインバリエーションも豊富です。
ベルト(パタゴニア)
引用元:https://www.patagonia.jp/product/friction-belt/59179.html
漁網リサイクルグッズを積極的に扱うブランドとしてもよく知られるアパレルブランドのpatagonia(パタゴニア)。
この漁網ベルトは耐久性・速乾性にも優れている他、フェアトレード商品であることにもこだわっています。
また2022年6月、パタゴニアは、日本語とスペイン語で書かれた海洋汚染をテーマにした絵本を発売しました。子どもたちに海洋汚染問題を投げかけ、自然と共存していくことの大切さを伝えています。
(参照:https://www.patagonia.jp/product/better-than-new-japan-version/BH131.html)
引用元:https://www.patagonia.jp/product/better-than-new-japan-version/BH131.html
ポーチ(ottorossi)
引用元:https://www.ottorossi.jp/shopdetail/000000000032/
素材の光沢感が上品な印象の漁網ポーチ。ヌメ革をアクセントとして取り入れることで高級感を醸し出しています。
マチつきなので、化粧品やスマホなどの電源コードなどのかさばりがちな小物をすっきり収納できます。
Tシャツ(D-VEC)
引用元:https://d-vec.jp/product/VF-2TS04628blue
前身頃は漁網リサイクルジャージ、後身頃はリサイクルポリエステル&綿という異素材の組み合わせが個性的なTシャツです。
胸部分は大きめのポケットつきでワイヤレスヘッドホンなどのちょっとした小物が入って便利です。
シューズ(PATRICK)
引用元:https://patrick.jp/collections/sustainable/products/504181
スニーカーブランド『PATRIC(パトリック)』の「UMINOKUTSU」シリーズは、廃棄漁網を原料の一部に使用したリサイクルナイロンを使用しています。これは東北・三陸の漁師のリーダーから成るフィッシャマンズ・リーグとのコラボによるもので、素材や履き心地の良さ、展開カラー等ディテールにこだわったアイデアは現場の漁師の意見を取り入れて制作しています。
(参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000084.000045950.html)
食器たわし(&LOCALS)
引用元:https://andlocals.jp/products/detail/49
実際にカタクチイワシ漁で使用していた網を捨てずにたわしにしたものです。少しの洗剤で泡立ち、汚れがよく落ちることから商品化したのだそうです。乾きやすく清潔に保てるのも漁網ならではです。
漁網リサイクルに取り組むための企業の姿勢
引用元:https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4452.html
海洋ゴミ問題は、早急に解決しなければならない環境問題のひとつであり、中でも「ゴーストギア」は海洋生物に深刻な状況をもたらしています。
消費者にとっても日常的にSDGs達成を意識するようになった今、企業は海洋への配慮をした商品やサービスが提供することを求められているのではないでしょうか。ゴーストギアの流出を防ぎ、使い終わった漁網のリサイクル製品を流通させるためには、個人が意識を高めるとともに、企業は新たな素材の開発や循環型社会を確立する仕組みづくりへの積極的な姿勢が必要になりそうです。