各メディアで取り上げられ、注目度上昇中の『バナナクロス』。
私たちにとって身近な果物であるバナナの茎の繊維を活用したサステナブルな生地であり、コットンのようなスタンダードな生地として確立する可能性のある素材です。
今回は、バナナクロスの原料や、生地の特徴を解説します。
目次
なぜバナナ?
まずは、糸の原料としてバナナが使われるようになった背景を探っていきます。
着目したのは、バナナの実を収穫した後に廃棄される「茎」の部分でした。
大量に廃棄されるバナナの茎
バナナは赤道付近の熱帯・亜熱帯の地域を中心に栽培されている多年性植物。
高さ数メートルにもなる”バナナの木“は、実際には木ではなく葉が重なって形成される”仮茎“にあたります。
バナナの実は一度収穫したらそれ以降実ることはなく、この茎は次のバナナを育てるために伐採されてしまいます。
伐採された茎は、焼却されるか、もしくはそのまま放置されたままのことが多いそう。
焼却すれば二酸化炭素の排出、放置された茎は腐敗による悪臭がしたり、地下水や土壌を汚染したりと、環境被害が発生してしまいます。
全世界でのバナナの年間収穫量が1.5億トンに対し、廃棄部分は10億トンにもなるといわれています。
廃棄される部分が非常に多いバナナをなんとか活用できないかという想いから、バナナの茎をアップサイクルした糸が開発されました。
糸に使える繊維は廃棄部分の2-3%しか取れないといわれていますが、年間の廃棄量が10億トンであることを踏まえると約2000万トン採取が可能であると考えられます。
年間約2600万トン生産されている綿花に次ぐ天然繊維として、一般的に使われる素材になることが期待されています。
バナナクロスとは?糸と生地の特徴
注目されているバナナクロスのサステナブルなポイント、糸と生地の特徴を解説します。
サステナブルなポイント
廃棄されるバナナの茎を活用しているため、新しく畑をつくる必要はありません。
繊維用の植物を育てるための水や農薬も必要なく、原料を回収できます。
また、廃棄された茎の焼却処理による二酸化炭素の排出、腐敗による土壌汚染の削減にもつながります。
本来ごみである部分が買い取られることで、バナナ農家の新たな収入源や雇用機会の増加にもなるため、人にも環境にもやさしい素材であるといえます。
糸と生地の特徴
バナナの茎の繊維は一本一本が短く、糸にするのが難しいといわれています。
そのため、コットンと混紡して製糸するという方法で、バナナ繊維が10~30%配合された生地が主です。
現状では、バナナ繊維を配合した太めの糸はリネンと同等の強度が確認されており、ジーンズやジャケット、トートバッグなどしっかりとした生地の製品の開発が先行していますが、バナナ繊維とコットンの配合を変えたり、細めの糸の開発がすすめられたりと、今後も幅広い製品に使われることが予想されます。
バナナクロスを使用したグッズ
バナナクロスを使用したグッズには、他の素材にはない独特の風合いと手触りが感じられます。
厚手でしっかりとした生地の良さを生かしたアイテムをご紹介します。
トートバッグ
厚手のコンパクトなトートバッグです。
こしのある触り心地のキャンバス地には、バナナクロスならではの茶色い繊維片が見られます。
バナナ繊維の色をそのまま活かし、ナチュラルな風合いに仕上がっています。
靴下
バナナクロスを使った糸で編んだ靴下は、麻に似た質感に仕上がっています。
太めの糸を使っているため肉厚で高級感があり、通気性も良く蒸れにくい靴下です。
軍手
バナナクロスで編んだ軍手。
ほどよい固さで肉厚に編んであるため、快適に作業ができます。
デニム
コットンのデニムに比べて、麻に似たサラリとした肌触りが特徴です。
繊維が短いため、表面にはネップと呼ばれる糸のかたまりができやすくなりますが、それも味わいのひとつになります。
バナナクロスだからこその風合いが楽しめるデニム生地で、パンツをはじめ、ポーチやバッグなどの雑貨類も製作が可能です。
バナナクロスを使ったグッズには、オリジナルの“BANANA CLOTHタグ”や、バナナペーパーを使った紙タグをつけることができます。
一見しただけではバナナが使われていると伝わりにくい生地でも、タグをつけることでバナナの繊維をアップサイクルしたサステナブルな生地であることをアピールできます。
BANANA-CLOTH®は、MNインターファッション(株)の登録商標です。
バナナクロスの定着を目指すバナナクロス推進委員会
繊維の開発・普及活動を進めているバナナクロス推進委員会は、繊維素材に精通している会社や生地、染色、縫製など、各分野のスペシャリストたちが手を組んで立ち上がった団体。
さまざまな天然繊維の研究を試した末、バナナ繊維にたどりつきました。
展示会でバナナクロスを発表したところ、供給が間に合わなくなるほど多くの企業から問い合わせが殺到したそうです。
現在は、より多くの企業がバナナクロスを活用できるよう、繊維の改良や生産ラインの強化など、安定して生産できるよう徐々に準備をすすめている段階だそう。
先んじてバナナスムージー店のスタッフユニフォームや、都内のプロラグビーチームのオリジナルグッズとして、バナナクロスを使用したグッズが展開されました。
しかし、現状は原料の供給や生産力が需要に追い付かず、大量生産には対応できかねるようです。
いずれ体制が整い安定して生産できるようになれば、価格も落ち着き一般的な生地と同様に扱うことができるようになるとのこと。
バナナクロスを天然繊維の文化のひとつとして定着させるため、バナナクロス推進委員会は活動しています。
今のところはSDGs、サステナブルな取り組みを進めたい企業からの問い合わせが多いようですが、バナナクロス推進委員会が目指すのは一般的な生地としての定着です。
年間約2000万トンの収穫が見込まれるバナナ繊維を活用し、”サステナブルの流行“ではなく、綿や麻と並ぶ一般的に普及する天然繊維として扱えるようになることを目指しています。
企業として環境に配慮した取り組みを進めていくことは大事ですが、それが一過性のものであってはならないと気付かされます。
まとめ:バナナクロスで企業のサステナブな取り組みを
バナナは年中食べられている果物で、私たち日本人にとってもなじみのあるフルーツです。
しかし、バナナの茎が大量に廃棄されている事実、環境に悪影響を与えているという事実を知る人は少ないのではないでしょうか。
バナナクロスが市場に出回るようになれば、バナナの生産背景、環境に配慮した生地であることが広く認知され、より親しみのある生地として定着するでしょう。
バナナクロスを使った製品は強度もありしっかりとした生地感が特徴です。
生地の風合い、見栄えもいいので、サステナブルな取り組みを進める企業のオリジナルグッズとして最適です。
バナナクロスを使用したOEMグッズ製作をご検討してみてはいかがでしょうか。