一昔前、「オタク」といえばアニメやゲームなど、特定の分野に関連するものを深く楽しむ人を指していました。ところが今では、世代や性別に関係なく、自らの趣味を深く追求するさまざまな分野の「オタク」が集まっています。
「オタク」もしくは「ヲタク」と呼ばれる人たちは、総じて好きなものに対する消費意欲が高いため、あの手この手でオタク層にアプローチする企業も増えています。さらに「推し活」ブームも後押しする形で、ライトユーザーを含めたオタクをターゲットにした市場は年々拡大しています。多くの企業も注目する「オタク消費」の実態と、オタクをターゲットにしたビジネスでのポイントを、さまざまな事例を交えつつ解説していきます。
オタク人口は増加している
オタクとは、自分が好んでいるものや興味を持っている分野に対して、一般よりも深く愛好する人を指します。これまで、オタク市場はアニメやゲーム、アイドル、コスプレ、鉄道など一部のジャンルを対象としていました。
しかし近年では、コスメや美容、DIYなど、あらゆる分野でそれに精通する人をオタクと呼ぶようになり、オタク市場が拡大している状況です。
矢野経済研究所が2017年に行った調査で、18歳~69歳までの男女のうち約20%、つまり約5人に1人が「何らかのオタク」であったことが分かっています。今後もオタク人口は増加する見込みです。
オタクは1人当たりの消費額が大きい
オタク市場はさまざまな業界から注目されています。その理由の一つに、オタク1人当たりの消費額の高さがあります。自分の好きなものには惜しまず投資・消費するオタクは、近年の「若者の消費離れ」の真逆を行く存在といえるでしょう。
オタク市場はさまざまな業界から注目されています。その理由の一つに、オタク1人当たりの消費額の高さがあります。自分の好きなも矢野経済研究所の「オタク」に関する消費者アンケート調査(2018年)にて算出された、オタク1人当たりの年間消費額を見ると、最も消費額が大きいのはアイドルオタクで年間10万円以上、次いでメイド・コスプレサービスが約6.8万円、鉄道模型が6.3万円となっています。
平均値でこの額ですから、自ら進んでより高額な商品を購入するユーザーも少なくありません。
特に、Z世代の女性のオタク活動を中心に、「(オタ活)オタク活動」は「推し活」と呼ばれるようになり、若い世代のトレンドを牽引するキーワードとなっています。
こうしたオタクによるオタ活・推し活に付随する全ての消費活動は「オタク消費」として、エンタメ、アパレル、飲食、あらゆる市場から注目されています。
「オタク=ネガティブ」の時代の終焉
「オタク」という言葉は、ともすればネガティブなイメージを持たれがちでしたが、それも薄れつつあるようです。「オタク女子」「推し活女子」なる存在も登場し、アニメやアイドルだけでなく、コスメオタク、美容オタク、DIYオタク、100円ショップオタクなど、あらゆる分野を究めるオタクの存在が広く知られるようになっています。
また、その分野の情報に詳しく究めている各種オタクは、SNSの発展とともに、自ら得た知見を発信し、SNSユーザーたちにとっての情報源ともなっています。
「国内だけでなく、海外でも日本のオタク文化に深い興味を示す人が多くいる点も要注目です。アニメに登場した土地や建物を巡る「アニメの聖地の巡礼」を目的とするコンテンツツーリズムは、インバウンドからのニーズも高まっています。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査(2018年)」によると、2018年に日本に訪れた外国人のうちの4.6%が映画・アニメ縁の地を訪問しており、「次に日本に来たら映画・アニメ縁の地を訪問したい」と答えている人も9.2%います。内閣府が海外に向けて日本の魅力を発信した「クールジャパン戦略」も記憶に新しいところです。
自称オタクのライトユーザーも参入
オタクという言葉にネガティブなイメージが持たれていたころは、職場や学校などでオタクであること、そのような趣味を持っていることを公言するのは難しいものでした。
しかし、オタクという言葉のイメージがポジティブに変化してきたことで、これまでのオタクとは異なる比較的ライトなオタクも増えています。SNSの登場で、オタク同士の交流が容易になったことも要因の一つでしょう。情報網も発達した今では、ごく一般的な人がその道のプロにも負けないくらいの深い知識を持っていることも珍しくありません。
Z世代を中心としたオタ活のひとつ“推し活”が広がりを見せ、一般的にも“推し活”という言葉が知られるようにもなりました。
市場規模も順調に拡大しており、矢野経済研究所は、2018年度の市場規模は2014年度比でアニメが104.5%、アイドル分野で111.6%と着実に成長すると見込んでいます。これはライトなオタク層が増加したこと、分野が広がっていることが影響していると考えられます。
同じく矢野経済研究所では、2030年にはオタク人口の比率が30~40%になるのではと予想しています。1人当たりの消費額が高く、さらに人口の増加・国内外における市場規模拡大も見込まれるオタク分野にはまだまだビジネスチャンスがありそうです。
オタク市場を理解し新規顧客層へアプローチを行った事例
国内外問わず拡大し続けるオタク文化を事業に取り入れることで、自社の利益を向上させることができるかもしれません。すでに大手企業も乗り出している「企業×オタク文化」の事例とその効果をご紹介します。
TOYOTA『公式痛車』でオタクディーラーへ訴求
2013年、トヨタ車の展示や試乗を行っていた「アムラックストヨタ」が公式痛車を限定で販売し話題になりました。「痛車(いたしゃ)」とは、車全体にアニメキャラクターをデザインして通常よりも派手な見た目に仕上げた車のことです。
この時販売されたのは、人気車種プリウスとヴィッツの中古車を1台ずつの計2台。アニメ「ガールズ&パンツァー」のキャラクターでラッピングされたものでした。
翌年にはTOYOTA86とAQUAをベースに、アニメ「ラブライブ!」の公式痛車「国立音之木坂学院公用車」を発表し再び話題になっています。こちらでは、カーナビのボイスにアニメのキャラクターを採用するなど、こだわりぬいた仕様でオタクの消費欲をくすぐりました。
いずれも限定販売であったため、商談権は抽選で決められることとなり、多くの応募があったといいます。
三越百貨店によるゲームタイトルコラボの意外性
有名デパートまでオタク分野に乗り出しています。デパートの三越では、育成シミュレーションゲーム「艦隊これくしょん-艦これ-」の5周年を記念してコラボグッズを発売。
ジャケットやパンツ、ワンピースといった衣料品からお酒、生活雑貨まで、幅広いジャンルのコラボ商品を販売して話題を呼びました。実際に高級スーツを購入したファンも少なからずいるようです。「艦これ」のメインユーザー層の多くは30~50代の男性ですが、ファン層の行動・心理をよくリサーチして展開したことで、キャラクターグッズとしては比較的高額商品にも関わらず、上記のような成果に結び付きました。
三越は、これまでのデパートのイメージを覆す戦略で、新たな顧客層を呼び込めるよう積極的なアプローチを行っていることが分かります。
30代女子を狙い撃つ懐かしアニメとコスメのコラボの成功
30代の女子が歓喜した「アニメ×コスメ」はSNSを中心に話題を呼びました。
懐かしの「美少女戦士セーラームーン」とコラボしたコスメはまるで当時のアニメから飛び出したかのようなデザインで、幼いころに抱いた美少女戦士への憧れを思い出したアラサー女子に大人気となりました。
こうした30~40代女性をターゲットにした子供の頃に大好きだったアニメと女性市場でのコラボ商品は、2010年代から活発になった90年代アニメのリバイバルブームと相まって、コスメ・アパレルを中心に各社から様々な商品展開がされています。
ミニオンズやサンリオなどのキャラクターコラボ活性化
年齢を問わず人気のキャラクター「ミニオンズ」もコラボグッズを多数販売しています。 老舗バッグブランド「LeSportsac (レスポートサック)」では、全面にミニオンズたちがたくさんプリントされたバッグを発売。アース製薬、花王、ミューズ(レキットベンキーザー・ジャパン)と大手ライフスタイルメーカーがミニオンズ限定パッケージの製品を発売し、子どものいる家庭の主婦のみならず、ミニオンズファンも続々発売されるコラボ商品をGETするために大忙し状態でした。
さらにコラボグッズといえば、不動の人気を誇るサンリオを忘れてはいけません。ジュエリーブランド「THE KISS」とハローキティのコラボで生まれたアクセサリーは、どれもキュートで女性の購買意欲をくすぐります。その他、洗剤、化粧水、ブレスケア商品と女性の身近なアイテムとのコラボは、ハローキティ45周年(2019年)の節目とともに続々と発売が予定されています。また、サンリオには若い女性オタク層のファンも多く、そういったターゲット層を狙い撃ちにする「推し活」サポートグッズも展開。サンリオならではのかわいらしいキャラクターグッズを「推し活」ニーズに合わせて開発し、推し活女子の人気アイテムとなっています。
アパレルブランドのキャラクターコラボ、オタク向け商品の定着
Tシャツやパーカーなどのカジュアルなアパレル商品では、ユニクロやしまむらでのコラボが盛んにおこなわれています。アメコミのマーベルコミックやONE PIECEやNARUTOなど幅広い世代に人気の作品コラボにとどまらず、刀剣乱舞やツイステッドワンダーランドなど、10~20代女性のオタク層をターゲットにしたキャラクターコラボも盛んに行われるようになり、今ではアニメキャラコラボ商品の展開はすっかり定着した光景になりつつあります。
また、サマンサタバサやジルスチュアートをはじめ、ドルチェアンドガッバーナやイヴサンローランのようなハイブランドと「ジョジョの奇妙な冒険」「呪術廻戦」など漫画作品とのコラボ商品も登場しています。
先述のサマンサタバサ、そしてカジュアルブランドのWEGOなどキャラクターコラボ商品を手掛けたのちには、オタク市場での推し活需要を受けて、推し活向けのおしゃれなオリジナル「痛バッグ」を発売しています。
話題性のあるコンテンツとコラボしてみませんか
オタク・ファン心理を掴んで集客低迷を打開する
自動車、日本酒、デパート。この3つに共通する課題は、若年層による消費の減退です。これには、「収入が減少して自動車が買えない」という現実と、「そもそもお酒を飲む習慣がない」「デパートで高額な衣類を買わなくともファストファッションがある」など若者の意識の変化が関係していると考えられます。
そこで、これまでアニメなどのオタク分野とは縁遠かった企業が、あえて「好きなものには消費を惜しまない」オタクたちをターゲットにして新商品の販売に踏み切り、新たなマーケットを開拓するようになりました。今回紹介した事例でも、作品を愛してやまないオタクたちが高額でも商品を購入している点は見逃せません。
昨今では、大手企業や伝統を守る酒造メーカーや、伝統工芸を扱うメーカーもオタク市場に参入しています。オタク文化を理解したうえで、アニメやゲームなどのIPコンテンツとコラボレーションした商品販売やキャンペーン企画の展開などにより、認知向上や利益拡大を目指してみてもよいのではないでしょうか。
しかし、どのようなジャンルが今のトレンドなのか、オタクに求められているものは何か、一からリサーチして作り上げるのは大変です。
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