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ECサイトが街に進出!話題の「売らない、買えない」ショールームで展開されているサービスや価値とは?
ECサイトが街に進出!話題の「売らない、買えない」ショールームで展開されているサービスや価値とは?

2022年11月から12月にかけて、東京・原宿に相次いでオープンした2つのショールームが話題になりました。
大手ファッションECサイトZOZOTOWN(ゾゾタウン)、そして世界約150カ国で展開されているファストファッションブランドSHEIN(シーイン)、いずれも初の、店舗型ショールームです。
ともに「商品をその場で手に取ったり、身に着けてみたりする」ことはできますが、「そのまま購入に至る」ことはできず、従来の販売型の店舗とは異なったサービスを展開しているのが特徴です。商品を「売らない」、訪れても商品を「買えない」ショールームを、ECサイトがあえて展開する理由とはいったい何なのでしょうか。

秘密を探るべく、この2店舗を中心に展開されているサービスをご紹介しながら、「ショールーム」の在り方や価値について解説します。

商品の魅力を伝えるブランディング、商品の認知を広げるマーケティング活動の参考にしてください。

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表参道に相次いでオープン!話題のショールーム2店舗

ゾゾタウン_似合うラボ

引用元:https://niaulab.com/

ZOZOTOWN「似合うラボ」

人気のファッションECサイトZOZOTOWN(ゾゾタウン)による、完全予約制の施設です。ショールームという言葉からイメージできるような商品の展示はなく、当然ここでショッピングを楽しむことはできません。
ここでは、オンラインで数々のファッションブランドを取り扱うZOZOTOWNが蓄積してきた「商品と購入者のデータを基にしたAI」と、「プロのスタイリスト」の力を掛け合わせ、他の誰でもない自分だけの「似合う」を見つけることができるのです。
ブランドミックスして提案されるファッションアイテムのセレクト、フィッティングだけでなく、すべてプロの手によるヘアメイク、フォトシューティングまで含まれているため、所要時間は2時間以上。全く新しい自分を発見できる「超パーソナルスタイリング体験施設」と謳われています。これだけの体験ができるにも関わらず、現在のところ利用者側は完全無料です。自分のためだけに、時間もプロの手もかけて似合うものを探すという体験は、このショールームに来ないと味わえません。自分ひとりでは気づけない、新たな「似合う」を見つけることができる場所として話題になっており、オープン以来ずっと予約が取りづらい状態が続いています。
「似合うラボ」での体験データもまたAIに蓄積され、「似合う」を見つけるための精度向上に活用されるということで、ZOZOTOWNは、データのさらなる蓄積・解析により「感性のセオリー化」実現を目指していると公言しています。

「似合うラボ」の入り口は、このようになっています。

ZOZOTOWN「似合うラボ」外観

完全予約制のZOZOTOWN「似合うラボ」エントランス

ネオンカラーに輝くロゴの左にあるのが入口です。予約者と関係者しか入れない「ラボ」という名にふさわしく、暗証番号が設置されているところが本格的ですね。

SHEIN「SHEIN TOKYO」

世界約150ヶ国で展開されているファストファッションブランド「SHEIN」も、初の実店舗となるショールームを、東京・原宿にオープンしました。通販特化型のブランドとして、世界規模で急成長を遂げてきたSHEIN初の常設店舗も、ショッピングを楽しむためのお店ではありません。商品の購入ではなく、各ジャンルの最新アイテムを実際に手に取り、身に着け、その体験をシェアすることを目的としたショールームです。「性別・年齢・体形といったものにとらわれず、自由にファッションを楽しむためのショールーム」と銘打たれています。あくまで体験のための場なので購入して持ち帰ることはできませんが、展示されているアイテムは全て、SHEINのアプリかウェブサイトで購入することができます

ショールームに足を運ぶ価値とは?

SHEIN TOKYOに行ってきました

SHEIN_TOKYO

原宿にオープンしたSHEIN初の常設店「SHEIN TOKYO」

賑わうキャットストリートを進むと見えてくる、「SHEIN TOKYO」の文字。
ここは試着や撮影のできるショールームなので、商品を購入して持ち帰ることはできない旨を、入口にいるスタッフからにこやかに案内されます。

マネキン_SHEIN
コレクション_SHEIN

最新トレンドをはじめ、カテゴリ別に魅力的なアイテムが展示されています。カテゴリごとの展示数は平均して20前後。オンラインサイトの豊富な品揃えの中から、「売上やアクセス数などを参考にセレクトされたアイテムが展示されている」とのことでした

HOME&PET
コスメ

アパレルをはじめ、雑貨やアクセサリー、コスメやペット用など、幅広いラインナップから気になるものを自由に手に取ったり、身に着けたりできるので、店内の人はみんな楽しそう。コレ欲しい!と思ったら、すかさずQRコードを読み取ります。商品の詳細を見たり、購入したりといったアクションはSHEINのアプリもしくはウェブから行うので、こちらはあくまで、試着のための「ショールーム」という位置づけです。

試着室1
試着室2
試着室3

イメージの異なるフィッティングルームが3つ用意されており、気になるアイテムを持ち込んで一緒に撮影することができます。フィッティングルーム以外も店内は基本的に撮影自由で、撮影した画像を投稿したSNS画面をスタッフに見せれば「ガチャ」に参加できます。商品を持ち帰ることはできないものの、ガチャで当たった景品を嬉しそうに受け取る人たちが見受けられました。

フォトスポット1
フォトスポット2
フォトスポットルーム

随所に「映え」を狙えそうなフォトスポットも設置されています。
このショールームでの体験を幅広くシェアしよう、というSHEINのメッセージが強く感じられました。

アパレル以外にも!売らない、買えないショールーム事例

福島日産自動車は、来たる3月、店舗内に、大手家電メーカーの製品や人工知能(AI)ロボットなど、車とは分野の異なるパートナー企業の商品やサービスを体験できるスペースをオープンします。
自動車点検などの間を仕方なく過ごす「待ち時間」から、「楽しんでもらえる時間」にするために、自動車のパーツやチャイルドシートといった自動車に関連する商品はもちろん、家電やモニター、タブレット端末など幅広い商品を、パートナー企業の希望に応じて展示。来店者はすべて自由に手に取り、実際に試してみることができます。カタログでは伝わらない実際の使い心地を確かめることができますが、商品の売買は行われません。性別、大まかな年代、といった来店者情報に加えて、どの展示商品を好んだか、実際に触れていた時間はどれくらいかといった、ショールーム内での動向データを収集して出展企業に提供し、販売戦略に役立ててもらうことも予定しています。

福島日産

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000053185.html

消費者がショールームで楽しむ時間に価値がある

いずれも、消費者が店内で過ごす時間に、付加価値をもたらしているという共通点があります。 消費者側も出店側もその時間の中でさまざまな価値を感じることができます。

ユーザー側

  • 手に取り、身に着け、使い心地を確かめるといったリアルな体験を通じて購入前に試すことができる
  • オンラインでは志向しないアイテムにも、店内のディスプレイを通じてタッチできる
  • 自分に合ったアイテムを選んだり、発見することができる
  • ECサイトでの購入とは違った、特別な体験をすることができる

出店側

  • オンラインでは接点がなかったアイテムに触れてもらうことができる
  • ショールームでの体験を通して既存ユーザーの満足度を上げ、ファンになってもらえる
  • 体験をシェアしてもらうことで、既存ユーザーから新規ユーザーに接触範囲を広げられる
  • オンラインではカバーできない精度の高いユーザーデータを獲得できる

このように、ショッピング以外のサービスを提供するショールームは、消費者を店舗に呼び込むだけでなく、満足度の向上や、データを獲得・蓄積し、訪れた後も継続的に接触を保つためのハブとして機能しているといえそうです。

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用語解説「ショールーミング」と「ウェブルーミング」と販売戦略

店舗VS ECサイト?「ショールーミング」と「ウェブルーミング」

ショッピング

実店舗で商品を確認したうえで、ECサイトから購入する消費行動を「ショールーミング」と呼びます。かつては、実店舗の売上をECに奪われるという観点から、こうした行動を消費者に取らせるべきではないと考えられていました。

対する「ウェブルーミング」は、反対にウェブで商品情報を詳細に調べてから店舗に出かけて購入する行動を指します。ECサイト利用時の送料負担の回避や、到着までにかかる時間を省略する目的で行われることが多い消費行動です。

近年は、代理店などを通さず自社サイトで直接消費者に販売するD2C(Direct to Consumer)の手法を選択するブランドが増加傾向にありますが、どのような販売経路を消費者がたどっても売上につなげられるよう、両者を取り込めるマルチチャネルを展開できるかが重要性を増しています。

多チャネル化する消費行動を取りこぼさないために

戦略としては次のような手法があります。

OMO(Online Merges with Offline)

オンライン上と実店舗(オフライン)での買い物の境界線を無くすマーケティング戦略を指します。オンライン上で購入した商品を実店舗で受け取れるようにしたり、ECサイトを利用して貯めたポイントを実店舗で使えるようにするなどして、ショッピングの際にオンライン、オフライン双方へ利用者がタッチできるようなパスを設定する方法です。

O2O(Online to Offline)

消費者をオンラインから実店舗(オフライン)へと誘導する戦略です。実店舗で利用できるクーポンをECサイトやアプリ上で配布することで店舗へ誘導し、実際の買い物は店舗で行ってもらうことなどを指します。

いずれも、オンオフ問わず消費者とのタッチポイントを増加し、購入へつなげることを目的としています。
消費者が求める商品を事前に察知して準備するのはもちろん、消費者が「ほしい!」と思ったときに即購入につなげられる販路を多角的に用意しておくことが重要になってきます。

今回ご紹介したショールームは、いずれもこれらの目的を実現するための戦略であるといえるでしょう。

まとめ

「ポチる」という言葉が浸透するほど、オンラインショッピングが一般化している今日この頃、あえて「売る、買う」以外のサービスを提供する場所としてショールームを展開している事例をご紹介しました。「モノを買う」行為に至るパスが多様化している今、ショールームが持ちうる役割として、以下のようなメリットがあると考えられます。

【ユーザー側】

  • 商品を手に取れ、試着もできるリアル感
  • 品質を目で見て確かめられる安心感
  • 販売へ誘導するだけとは異なる接客サービス(似合うものを客観的に探す、自分では選ばないものとの出会い)

【出店企業側】

  • オンラインではリーチできない顧客へのタッチポイント拡大
  • 既存顧客の満足度向上、さらなるファン化
  • 店舗でしか得られないデータ、顧客反応の収集・分析
  • 販売目的店舗と比較して安い人件費・テナント料

消費者との接点を常に保つことで消費者の次の行動を予測し、「ほしい!」「知りたい!」といったアクションにオンタイムで応えられるよう、多角的なチャネルを準備しておきたいもの。売らない、買わないショールームの躍進には、こうした理由が考えられます。 今後の販売促進・マーケティング活動の企画立案時に、参考にしてみてください。

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