ショッピングの際、価格や仕様を比較する際に目にする機会も多い「リファービッシュ品」。
一体どんな仕組みなのかを解説します。
モノを作り、流通させるうえでぜひ知っておきたいリファービッシュの概念を、しっかり押さえておきましょう。
目次
リファービッシュとは?
リファービッシュの意味
リファービッシュ(refurbish)とは、「改修する」「修理する」「磨き直す」「一新する」といった意味を持つ英語です。ここから転じて、初期不良、不良品として製造元に返却された製品や回収された中古の機器を整備し、新品に準じる状態に仕上げることや、そうして仕上げられた再生品を指します。
タブレット端末やスマートフォン、iPhoneをはじめとしたアップル製品などのほか、ロボット掃除機といった「この商品が欲しい!」というタイプの家電製品を探すときに、しばしば「リファービッシュ品」として目にしたことがある方も多いかもしれません。
「特定の人気商品」や、「型落ちでもいいから欲しい」という人が多く存在する類の品を探すと、市場に出回るものの中にかなりのリファービッシュ品が存在していることがわかります。
リファービッシュ品となるまでのルートと定義
リファービッシュ品とはどのように定義されるのでしょうか。
リファービッシュ品となるまでのルート
リファービッシュ品として市場に出回る製品には、いくつかのルートがあります。
- 初期不良により製造元に返品されたもの
- 展示品として使用されていたもの
- 月額利用などのサブスクリプションサービスで契約終了したもの
これらを、製造元であるメーカー、あるいはリファービッシュの専門業者などが回収して緻密な検査を行い、修理・検品を経て、リファービッシュ品として再生します。
リファービッシュ品となるまでの過程には逐一厳格な基準が設けられ、すべてをクリアしたものだけがリファービッシュ品となって市場によみがえるのです。
リファービッシュ品の定義 中古品・リユース品とどう違うのか
中古品は、こうした審査を経ることなく販売されるものです。
一度販売された、または利用されたことのある製品を、販売業者あるいは個人間などで再び商品として売買するという点ではリファービッシュ品と通じる部分もありますが、製造メーカーや専門業者による品質チェックや修理、パーツ交換といった工程を経ていないのが、リファービッシュ品との大きな違いです。
リファービッシュ品の価格
リファービッシュ品は、新品の販売価格よりも低価格で販売されることがほとんどです。
販売時期や商品の使用頻度・期間、外観の劣化など、製品の状態によって変動するため、リファービッシュ品の価格設定に明確な基準はありません。総じて、新品の販売価格よりも10%~20%ほど安く設定されていることが多いようです。
アップル製品や生活家電など、決して安くない製品であればあるほど、通常の価格よりも割安で買えるという点は、消費者にとっては大きな魅力となり得ます。
利益は二の次?リファービッシュ品を展開する企業の狙い
リファービッシュ事業による企業理念の表明
リファービッシュ品を展開する企業には、家電メーカーや大手スポーツ用品メーカーなど、自社の製品の販売が好調であるところも多く見受けられます。
リファービッシュ品とするためには自社による基準を厳格に設定し、新品と同様の品質とする必要があり、相応の運用コストがかかります。
製品の販売価格は通常の新品に比べて割安になることが殆どなので、リファービッシュ事業を展開することが利益の向上にすぐに貢献できるかというと、難しい面もあるようです。
にも関わらず、自社の製品を回収し、リファービッシュ品として再生する事業を展開することは、自社製品に最後まで責任を持つ、環境問題へ配慮し持続可能な経済活動を目指すなどといった、企業理念の表明の意味合いが込められている場合もあります。
リファービッシュ品のメリット
リファービッシュ品には、事業を展開する側にも、消費者側にも様々なメリットがあります。
不足する半導体の有効活用
2020年頃から危機が叫ばれ始め、未だ解消には至っていない世界的な半導体不足。
新型コロナウィルスのパンデミックや国際情勢などのさまざまな要因により、半導体の供給が需要に追い付かない事態が続いています。
最も危機的だった状況は脱したとも言われていますが、自動車業界、家電業界では未だ半導体不足の状態が続いているのが現状です。
そんな中、既存の製品をいかして修理調整されるリファービッシュ品であれば、今ある半導体を有効に活用することができます。
コスト削減の可能性
回収した製品の検査、パーツの交換、修理調整、さらには厳格に設定された出荷基準に見合うか否かの厳しい検品など、リファービッシュ品として再生されるまでにはそれなりのコストがかかります。
それでも、新たな製品を同じ台数作り続けるよりは製造コストが削減されることもあるのは、リファービッシュ品のメリットの一つとなっています。
その分、新品に比べて購入時の価格が安く抑えられるという点は、消費者にとってもうれしいポイントです。
厳格な検査・修理・検品を経ているため、品質が保証されている
リファービッシュ品となるために必要な厳格な出荷基準。
これを突破しているということは、リファービッシュ品として出荷される時点での品質が保証されていることを意味します。
購入してすぐに不具合が生じる、初期不良といった事態に見舞われることはまずないというのは、購入者にとって大きなメリットとなります。
電子ゴミの削減
リファービッシュ品となるために回収された製品は、検査を経て、不具合のある部品・パーツはすべて交換されるものの、使用できる部品やパーツは再利用されます。
パソコンやスマートフォンなどの電子機器は、頻繁にバージョンアップが行われることから、まだ使えるにもかかわらず古い型の買い替えが起こり、破棄されて電子ゴミとなっていきます。
電子ゴミは適切に処理する必要がありますが、増加のペースに処理が追い付かず、中には不法投棄されたり、有害物質が流出したりすることもあり、世界中で問題になっています。
回収されて戻ってきた製品は廃棄してしまえば産業廃棄物ですが、リファービッシュ品として再生することで電子ゴミの削減となり、環境負荷の抑制につながります。
リファービッシュ品のデメリット
リファービッシュ品にはデメリットも存在します。
保証期間が新品とは異なる
製品購入から一定期間、製品の機能について保証が行われる保証期間。
期間内であれば、故障や交換などに応じてもらえるこの保証期間は、新品とリファービッシュ品とでは異なる設定になっています。
メーカーやブランド、販売業者によって独自にリファービッシュ品の保証期間が設定されていますが、新品よりは短い場合が殆どであることを念頭に置いておく必要があります。
一度誰かの手に渡ったことによる使用感の残存
中古品として流通する中で、未使用品・未開封品などと呼ばれる製品は、その名の通り一度も使用されたことがない、開封されたことがない製品です。
中古品と異なり、厳格な検査・修理・検品を経ているために新品同様の機能を持っているリファービッシュ品ですが、やはりまっさらの新品に比べると使用感が残ることがあります。
一度でも誰かの手に渡ったことがある製品であるということは、消費者によっては大きなデメリットとなり得るでしょう。
リファービッシュ品を扱う企業事例
実際にどのようなリファービッシュ品があるのでしょうか。
ここからは企業事例をご紹介します。
Back Market(バックマーケット):リファービッシュスマホを扱うフランス発スタートアップ
引用:https://www.backmarket.co.jp/
Back Marcketは、グローバルなリファービッシュ品(整備済製品)専門マーケットプレイスを展開する、フランス発のスタートアップ企業です。
取り扱うのは、厳格な審査プロセスを通過したリファービッシュ業者による製品だけで、すべてのデバイスが業界標準に従ってテストされ、完璧な動作状態に復元されていることを保証すると謳っています。
同社によれば、新品と比較してリファービッシュスマホは原材料の使用量を91.3%、水の使用量を86.4%、電気電子機器廃棄物の発生量を89%、大気中への二酸化炭素排出量を91.6%削減できるとのこと。
ヨーロッパでは、購入・利用されているスマートフォンのおよそ1/3がリファービッシュ品ですが、日本の市場は未だ発展途上。ここ日本でも、財布にも環境にも優しいリファービッシュスマホの普及を進めたいとしています。
ZERO PC:環境負荷ゼロを目指すエシカルパソコン
ピープルポート株式会社が展開する「ZERO PC」は、廃棄されたパソコンを回収してリファービッシュ品として再生した製品です。
リファービッシュに関する専門の知識とスキルは、日本人および日本に逃れてきた難民の方々に伝授し、世界のどこでも通用するリファービッシュ技術者として育成しています。
ZERO PCは、同スペックの新品の半額以下で購入できますが、なんと購入前に無料で試すことが可能。
30日間のトライアル期間や1年間の無償修理保証期間がついています。希望のスペックを備えた自分に最適のデバイスを、使用した上で見つけられる仕組みになっており、初めてリファービッシュ品を購入する人にもトライしやすい購入スキームになっているところにも注目です。
パナソニック:Panasonic Factory Refresh
引用:https://ec-plus.panasonic.jp/store/page/pfr/
大手家電メーカーのパナソニックは、2024年4月から、検査済再生品を扱う「Panasonic Factory Refresh」を開始しました。取り扱いカテゴリは現在4つで、生活家電、キッチン・調理家電、AV機器、カメラとなっており、今後も増えていくと発表されています。
一例として、ドラム式洗濯乾燥機のリファービッシュ品が通常価格の約2割引で販売されているほか、すべてのリファービッシュ品に1年間の保証期間も設けられています。
また、ヘアードライヤーや食洗器のリファービッシュ品をサブスクリプションで利用できるサービスも展開しており、高品質な家電を気軽に利用できるとして好評を博しています。
ナイキ:Nike Refurbished(ナイキ リファービッシュド)
引用:https://www.nike.com/jp/sustainability/nike-refurbished
返品された製品、店頭やイベントで展示された製品などを手作業で修繕し、ナイキストアで再び販売する循環型プログラムが、ナイキ リファービッシュドです。
リファービッシュ品の修復状態は2段階に分けて明示されており、殆ど新品に近いもの(01)と、やや使用感が残ったり、軽微なシミや傷がアウトソールに残ったもの(02)とがあります。
中古スニーカー市場は活況を呈しており、コレクターや投資、転売目的などで高値で取引されるものも数多く存在します。
そんな中、ブランド自らがリファービッシュ品を手掛けて市場に参入することで、取りこぼしていた中古市場の売上を確保できるうえ、サステナブルなアクションによるブランドイメージのさらなる向上にもつながっている一例ではないでしょうか。
エプソン:リファービッシュ・再整備プログラム
引用:https://www.epson.jp/corporate/action1/refurbish/
情報関連機器、精密機器を扱う電機メーカーのエプソンでは、資源の有効利用や廃棄物の削減、および商品を長く使ってもらうことを目的として、2019年から順次商品のリファービッシュと、再整備を進めています。
同社のリファービッシュ品は通常品と比べて梱包状態、同梱品が異なるものの、通常品と同じメーカー保証が付いています。
また、大判プリンターを対象とした「再整備プログラム」では、保守期間の終了を迎える商品に対して部品交換などの再整備を行っています。再整備と必要最低限の部品交換により製品の保守サービス期間は購入から最長10年にまで延長。
製品の使用期間が長くなることで、老朽化による買い替えと比較すると、「原材料調達~生産~流通」の過程で約91%のCO₂削減効果があるとしています。
リファービッシュに関する今後の展望
スマートフォンやPC、家電業界で注目される「リファービッシュ品」。
ヨーロッパに比べると、日本のリファービッシュ品の普及率はまだまだですが、今後は以下の条件下で、電化製品においてもリファービッシュ品の市場の成長が見込めるのではないでしょうか。
市場の成長と技術の進化
リファービッシュ品を扱う市場が拡大し、流通数が増えることで、メーカーおよびリファービッシュ業者内のリファービッシュ技術も進化していくことが考えられます。
ますます、「新品同様」のリファービッシュ品が普及するようになるかもしれません。
業界基準、共通認識の整備
リファービッシュ品の出品基準は厳格に設定されているとはいえ、各メーカーや業者によって個別に設けられており、業界での共通の基準が明確に定められているのではありません。
今後リファービッシュ市場の拡大に伴って、業界全体の共通基準が整備されていくことで、より消費者にとって判断のしやすいものになっていくことが期待されます。
消費者の認識変化と需要度の向上
現在はまだ、「中古品」との違いが浸透しておらず、新品同様に整備されているリファービッシュ品の品質が消費者に認識されていません。
また、「一度使用されたものを再利用する」ことへの根強い抵抗感が普及に歯止めをかけていますが、エシカル意識の高まりにつれて、こちらの需要度も変化していくことが考えられます。
まとめ:リファービッシュとは
スマートフォンやPC、家電業界で注目される「リファービッシュ品」について解説しました。
環境への配慮やコスト削減といった面から考えても、リファービッシュ品の普及は望ましいことであることがわかります。
市場のさらなる拡大、需要に応じて業界や取り扱い範囲が広がっていくことが考えられるので、これからも注目していきましょう。
トランスでは、クライアント企業のみなさまの目的に合わせた企画提案を得意としています。
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ミコメ ナホ
PCやスマホの買い替えって、なんであんなにめんどくさいんだろう…とため息ばかりついていましたが、次の買い替え時にはぜひリファービッシュ品を候補に品定めしてみようと思います。
公開日:
株式会社トランス