国内のホテルの部屋に必ずあった歯ブラシやクシ、カミソリなどのアメニティが2022年4月から削減対象となり、有料化されることをご存じでしたか。
2021年6月に成立したプラスチック資源循環促進法の具体案がまとまり、8月に対象製品12品目が明らかになりました。これもそうなの、と思うものまで対象となっており、2020年のレジ袋の有料化から始まった、プラスチックごみへの規制がますます加速しています。
今回は、プラスチック資源循環促進法について現時点で決定している内容や対象となっている業種、違反した場合の罰金などを解説していきます。
また、この法律によって消費者の生活にどのような影響があり、また企業のマーケティング活動としてどのような取り組みを行うべきかについても考えてみたいと思います。
プラスチック資源循環促進法とは
プラスチック資源循環促進法とは、プラスチック製品全般を対象に、プラスチックごみの削減やリサイクルを強化しようと制定されました。
国を挙げて、プラスチックを使った製品の設計から廃棄物処理まで、ライフサイクルにおける3R(リデュース・リユース・リサイクル)+Renewable(再生可能)を促進しようとする法律で、2021年8月には対象となる具体的な製品が決定されました。
ちなみに、レジ袋有料化は容器包装リサイクル法の関係省令の改正により実施されました。
プラスチック資源循環促進法には、主に3つの基本方針があります。
- プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計
- ワンウェイプラスチックの使用の合理化
- プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化
以下に、3つの基本方針の内容を簡単にまとめます。
プラスチック資源循環促進法の内容
「プラスチックの製造段階」において、製造事業者は、プラスチックの使用量を減らし、解体が容易でリサイクルしやすい製品を製造し、簡易な包装にすることが求められます。国は指針に適合した製品であることを認定する制度を新設し、消費者に選ばれるよう促します。
「販売・提供段階」が現在、話題となっている内容です。ワンウェイプラスチックとは、使い捨てプラスチックのこと。小売業やサービス事業者など、使い捨てプラスチックを無料で大量に提供している事業者は、プラスチックの製品の提供を削減することが求められています。
「排出段階」では、例えばプラスチック製の文房具なども、食品トレーや菓子袋の容器包装などと一緒に回収できるようにします。市区町村が再商品化事業者と連携して、再商品化できる仕組みを設けます。製造事業者や販売事業者は、プラスチック製品を自主回収する計画書を作成し、自主回収を促進します。
対象者と対象製品
プラスチック資源循環促進法の対象となるのは、スーパーやコンビニなどの小売業、持ち帰りや配達を含む飲食業、外食チェーン店、ホテルや旅館の宿泊業、クリーニング店など。対象となる業種に該当し、かつ年間5トン以上の使い捨てプラスチック製品を提供する事業者に対して、削減が義務化されます。
プラスチック資源循環促進法の対象製品は以下の通りです。
対象者 | 対象製品 |
---|---|
スーパー
コンビニ 百貨店 飲食店 など |
フォーク、ナイフ、スプーン、マドラー、ストロー |
ホテル、旅館など | 歯ブラシ、ヘアブラシ、クシ、カミソリ、シャワーキャップ |
クリーニング店など | ハンガー、衣類カバー |
対象製品は「特定プラスチック使用製品」として指定され、フォークやスプーン、ストローなどのほか、ホテルの部屋に置かれている歯ブラシ、カミソリ、クシなどのアメニティグッズ、クリーニング店のハンガーや衣類カバーの12品目です。
いつから施行されるのか
プラスチック資源循環促進法は、2022年4月の施行を目指しています。
特定プラスチック製品の有料化や、代替品などの対応をとらない事業者には、国が改善命令を出すことになっており、プラスチックを大量廃棄する事業者に国が指導する仕組みになっています。取り組みが著しく不十分な場合、社名を公表し、国の命令に従わない場合は、50万円以下の罰金が科せられます。
対象のプラスチック製品を無償提供している企業がすべきこと
対象のプラスチック製品を現在無償で提供している企業は、早急な対応を迫られています。 国が推進する対応方法は以下の通りです。
提供の仕方 | プラスチック製品の有料化
辞退者へのポイント付与 繰り返し使える製品への移行 消費者の意思確認 再利用への回収強化 |
---|---|
製品の工夫 | プラスチック使用量の少ない製品の提供
代替製品への切り替え 大きさなどを考慮した包装 |
具体的な方法として、プラスチック製品の有料化、辞退者へのポイント付与、消費者の意思確認、プラ使用量が少ない製品の提供、木製やリサイクル素材などの代替製品への切り替えなど、いずれかの対応が必要になります。
施行により起きる消費者の行動様式の変化
プラスチック資源循環促進法の施行により、消費者の行動が様変わりすることが予測されます。
その変化は現在プラスチック製品を無償提供している企業だけではなく、他の事業者にも影響が及ぶと考えられます。
消費者の行動変容はピンチではなく、チャンスになり得ます。消費者のライフスタイルを見直し、今後の対応を検討しましょう。
環境省によると、2020年7月のレジ袋の有料化によって、レジ袋辞退者が、コンビニで2割から7割半ばに、スーパーで6割から8割に上昇しました。レジ袋を受け取らないことが一般的になり、マイバックが急速に浸透したのも記憶に新しいでしょう。
生ごみをレジ袋に入れて捨てていた人は、新聞紙やチラシでゴミ袋を作って捨てるようになったり、生ごみ処理機を購入したりと多くの人が工夫をしています。
消費者の行動が変化すると、新たなニーズに応えるために新しい発想が生まれ、新しい商品につながります。
消費者の行動の変化
プラスチック資源循環促進法の施行により、これまで無償だったものが有料化されるため、損をしたくない気持ちが働いたり、環境配慮への意識が高まったりすることで、行動にも変化が現れると考えられます。
コンビニやスーパーのお弁当を購入する際、スプーンやフォークをもらわない代わりに、マイスプーンやマイフォーク、マイ箸を持ち歩く人が増えることが予想されます。
またホテルに宿泊するとき、クリーニング店へ洋服を取りに行くときは、マイ歯ブラシやマイカミソリ、マイ衣類ケースを持って行くのが一般的になる可能性があります。
まだ対象ではありませんが、プラスチック容器も近い将来なくなり、多くが紙製容器になったり、マイ容器持参で買い物に行ったり、なんてことも起こりうるかもしれません。
最近では、一部のコンビニが、販売しているおでんを家庭から持参した鍋に入れて提供するサービスを開始したというニュースも話題になりました。
消費者の意識の変化に合わせた製品づくりが大切
このような消費者の行動の変化によって、マイスプーンやマイフォーク、マイ箸、マイストローを持ち歩く人が増えることが考えられるため、法律の施行に向けて、箸やカトラリーに多くのニーズが集まると予想されます。
さきがけて、折り畳みできる箸やカトラリーのレパートリーを増やしているメーカもあり、中には環境に配慮した素材で作られたサステナブルなカトラリーも見受けられます。
今後ノベルティやオリジナルグッズを作る際は、マイ箸やカトラリー、マイストローなどをラインナップに入れることを検討してみると良いでしょう。
まとめ
プラスチック資源循環促進法は2022年4月からの施行を目指し、具体的な法整備が進められています。
2021年8月には、特定プラスチック製品として12品目が指定され、スーパーやコンビニなど対象事業者はプラスチック製品の提供削減に向けて動きを加速させています。対象となるのは、大量にプラスチック製品を提供している事業者で、年5トン未満の中小事業者や輸入品取り扱い業者は、ひとまずは自主的な対応に委ねられるというものの、時代を先取りして取り組むことが望まれます。脱プラスチックの動きはもはや止めることができない、大きな潮流となっています。