近年、コンピューターゲームをスポーツ競技として行うeスポーツが世界的な盛り上がりを見せています。
日本でも活躍するチームや選手が徐々に出てきており、今後の発展が期待される分野です。
この記事では、eスポーツとは何かを解説し、主なゲーム種目や市場規模についてもご紹介していきます。
目次
eスポーツとは
eスポーツ(e-sports)とは「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略称で、コンピューターゲームやビデオゲーム、モバイルゲームを使ったスポーツ対戦競技を示します。
国際的に開催されている競技大会では、賞金は計400億円を超え、ユーザー数も億単位となっているなど注目度が高く、莫大な市場を抱えています。
eスポーツの歴史
「eスポーツ」という言葉は、インターネットの普及により電子機器を使ったゲーム上でのスポーツ競技対戦が盛んになった状況を背景に、2000年ごろから使われるようになります。
以降フランスや中国、韓国などeスポーツの大会が世界各国で開催され注目を集めてきました。
日本では2015年に「一般社団法人日本eスポーツ協会(JeSPA)」、2018年に「一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)」が設立され、その他、2019年から開催されている、eスポーツの全国大会「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」や、2024年に初開催となったeスポーツ界の功績を称える「日本eスポーツアワード」の実施など、近年はゲームに関心の高い層だけでなく、一般的にも広く認知されるようになってきています。
eスポーツの主な競技種目
eスポーツの主な種目としては、以下が挙げられます。
種目 | 内容 | 競技タイトル例 |
---|---|---|
FPS | 画面上にキャラの腕や武器が表示された状態でプレーするシューティングゲーム。実際に敵と格闘しているような没入感を楽しめる。 |
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TPS | キャラクターの身体や背景が分かりやすく画面に表示された状態でプレーを楽しむシューティングゲーム。 |
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MOBA | チームを組んで、敵の本陣破壊を目指すストラテジーゲーム。戦略、チームワークが求められる。 |
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RTS | 対戦相手との攻防を通して相手の拠点撃破を狙うストラテジーゲーム。歴史やファンタジーをモチーフとした舞台設定が多い。 |
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スポーツ・レース | スポーツプレイヤーになったり、車やバイクを操作するレーサーになったりといったシミュレーションでプレーするゲーム。 |
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格闘ゲーム | 格闘技を使って対戦するゲーム。的確な技を選んで正確に入力する能力などが求められる。 |
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DCG | カードゲームの参加者になったシチュエーションでプレーするゲーム。戦略性や分析力などが求められる。 |
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パズルゲーム | 画面の上部から落ちてくる積み木のようなパズルを消し続けていくゲーム。ブロックの消し方に関する戦略や的確に操作を実行するための瞬発的な判断力、スピード感が求められる。 |
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特にシューティングゲームやストラテジーゲームは人気の高いジャンルとして知られています。
eスポーツはスポーツか、そうではないのか
日本でeスポーツが普及していく過程で、「eスポーツはスポーツなのか」という議論がよくなされるようになりました。
2018年、JOC(日本オリンピック委員会)の理事が「健康を害する恐れがあるゲームをスポーツと認めるべきではない」と発言しています。
JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)は、2024年現在、JOCや日本スポーツ協会への正式加盟を認められていません。
一方、eスポーツは従来のスポーツ同様に競技性が高く、手や頭脳など身体を使うため、スポーツの定義に当てはまっているという考え方もあります。
スポーツに欠かせない「身体活動を伴う」という条件を、どのようにとらえるかにより、見解が分かれると言えるでしょう。
日本ではまだ「eスポーツはスポーツではない」ととらえる人が多い中、世界的にはeスポーツをスポーツと見なす流れが強まっています。
IOC(国際オリンピック委員会)は、2017年にeスポーツに本格的に取り組んでいる競技者は伝統的なスポーツ選手に匹敵するとして、eスポーツをスポーツ活動と捉える公式声明を出しました。
また、eスポーツは世界的にスポーツベットの対象となっており、SDKIのアナリストによると2023年には約1105億米ドルという巨大な市場規模になると評価されています〈参照:SDKI オンラインスポーツベッティング市場調査-スポーツタイプ別(サッカー、バスケットボール、競馬、クリケット、ホッケー、その他)、ベッティングタイプ別および地域別-世界予測2024-2036年〉。
IOC(国際オリンピック委員会)は、2017年にeスポーツに本格的に取り組んでいる競技者は伝統的なスポーツ選手に匹敵するとして、eスポーツをスポーツ活動と捉える公式声明を出しました。
eスポーツはオリンピック種目になる可能性も
eスポーツは将来的に、オリンピックで競う種目に採用される可能性もあります。
IOCはeスポーツ国際イベントを新設するなど、オリンピック種目採用を視野に入れた取り組みを進めています。
eスポーツは若年層に人気が高いため、オリンピック種目に加えることによって、若者のオリンピックに対する関心度の向上や、新たなスポンサーの獲得が可能だと期待されているのです。
一方、eスポーツとして人気の高いFPSなどのゲームは銃で敵を撃ったり、人を殴ったりといった暴力的な表現が目立つため、平和の祭典であるオリンピック種目にふさわしくないという懸念があり、今のところ正式種目とすることは見送られています。
eスポーツがオリンピック種目に採用されるのは、2028年のロサンゼルス大会以降と予測されます。
日本のeスポーツの現状・市場規模
日本のeスポーツの市場規模は上昇傾向です。
2021年の国内市場は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けながらも前年比115.5%増の78.4億円となりました。
2022年以降は大型競技大会の再開の動きもあり、年平均20%を超える成長率で拡大することが期待されています。
2025年の国内市場規模は約180億円に達すると予測されています。
出典:「日本eスポーツ白書2022/角川アスキー総合研究所」
約180億円というのはどのくらいの規模なのでしょう。
これは日本の水泳用具の市場規模に匹敵します。〈参照:矢野経済研究所|スポーツ用品市場に関する調査を実施(2023年)〉
数多く存在するスイミングスクールや、学校の授業でも取り入れられている水泳の用具と市場が同規模という点から考えると、eスポーツが日本でもメジャーになってきていると言えるのはないでしょうか。
市場規模の拡大は、試合観戦や動画視聴の経験があるファン数が年々増加している点からもうかがえます。
出典:「日本eスポーツ白書2022/角川アスキー総合研究所」
2021年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けつつも、大会のオンライン配信定着などもあり試合観戦・動画視聴数は前年比108%の743万人を確保しました。
2025年1,200万人超えが予想されています。
eスポーツへの異業種からの参入事例
日本ではJeSPA(一般社団法人日本eスポーツ協会)やJeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)が設立された2010年代後半からeスポーツの認知度が高まり、市場にも異業種からの参入が見られるようになりました。
例えばJeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)には「SUNTORY」や「LAWSON」がスポンサーとなっており、eスポーツの発展をサポートする取り組みが進められています。
これからますます市場拡大が期待される状況であり、今後も新規参入を検討する企業が出てくるでしょう。
SUNTORY
サントリーはeスポーツ日本代表チームへの飲料サポートなどを通して選手の活動を支援するといった内容を盛り込んだ、「eスポーツ応援宣言」を策定しました。
国際大会に出場する日本代表選手に対して、1年分の清涼飲料水を提供するサポートプログラムなどに取り組んでいます。
参考:SUNTORY「第11回eスポーツワールドチャンピオンシップ『DOTA2』『鉄拳7』『eFootball ウイニングイレブン 2020』の日本代表選手を支援」
LAWSON
引用:https://www.lawson.co.jp/lab/tsuushin/art/1467837_4659.html
ローソンはeスポーツプレイヤーをサポートする食品の開発・企画を進める「e-SPORTSメシ開発プロジェクト」などを推進しています。
角川ドワンゴ学園N高等学校およびS高等学校や茨城県立水海道第二高等学校の生徒が合同で考案した「カツオピタパン」「ぱくぱくプロテイン入りど~なつ5個入」を関東・甲信越圏内の店舗で限定販売しました。
片手でも食べやすく、脳のエネルギーとなる糖分と腹持ちを良くするプロテインを同時に摂取できるなど、集中してゲームに取り組むプレーヤーに好まれそうなメニューが開発されました。
消費者からも好評を博し、幅広い層にeスポーツを印象付ける機会となりました。
参考:LAWSON「【関東甲信越エリア情報】N/S高、茨城県立水海道第二高校の生徒が考案『e-SPORTSメシ』発売決定!」
日本で活躍するeスポーツチーム・選手
2023年7月時点で、JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)でプロライセンスを取得している選手は約300人です。
eスポーツの大会はチームでエントリーするケースが多く、国内でも数多くのチームが設立されています。
日本国内の現役チームと、活躍している主な競技タイトルは以下の通りです。
チーム名 | 活躍する競技タイトル |
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DetonatioN Gaming |
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忍ism |
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DeToNator |
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野良連合 |
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SCARZ |
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父ノ背中 |
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TEAM GODSGARDEN |
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Rush Gaming |
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Sengoku Gaming |
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Sun Sister |
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チームごとに強みとするゲームタイトルが異なります。
好きなゲームがあるなら、そのタイトルの強豪チームをチェックしてみると観戦もより楽しめるでしょう。
eスポーツに関して知っておきたい用語集
eスポーツの大会などでは多くの専門用語が使われます。
実際の競技中にもこれらの略語や表現が飛び交ったり、ゲーム内でのチャットでもこのような専門用語でやり取りが進みます。そのため、業界に新規参入する場合、これらの専門用語を把握しておくと、関係者とのコミュニケーションが円滑になるでしょう。また、実際にプレイヤーとして参加しなくても大会を観戦したり、ゲーム実況などを見るときも、ある程度用語を把握していたほうが、より楽しめるのではないでしょうか。
以下、eスポーツ業界に関与する場合、知っておきたい用語集をご紹介します。
用語 | 意味 | |
---|---|---|
ア行 | アンチ | 「安全地帯」の略称。 |
イモスナ | スナイパーのように遠距離から攻撃すること。 | |
イモる | 敵の攻撃を避けるなど消極的な行動のこと。 | |
ウルト | 「Ultimate」の意味で、究極に強い必殺技のこと。 | |
エイム | 「Aim」の意味で、敵に照準を合わせること。 | |
エントリー | 最初に突入するプレーヤーのこと。 | |
起き攻め | 攻撃して倒れた相手が起きるタイミングで攻撃すること。 | |
オーダー | チームの各メンバーに指示を出す役割のこと。 | |
カ行 | カット | 敵を妨害したり倒したりすること。 |
カバー | チームのほかのメンバーを助けること。 | |
火力 | 攻撃力や威力を示す言葉。 | |
強ポジ | 有利になるポジションを指す言葉。 | |
クラッチ | 不利な状態を巻き返して勝利すること。 | |
クリアリング | 物陰などに隠れて敵がいるかどうか確認すること。 | |
サ行 | スニーク | 敵に見つからないように近づいたり、距離をあけたりといった行動を指す言葉。 |
タ行 | ドントピーク | 敵のいる場所を覗かず自分の姿を出さずにしておいて、時間稼ぎをする際などに使う。 |
ハ行 | ハイド | 隠れること。 |
バフ・デバフ | バフはステータスの上昇、デバフは下落を意味する。 | |
フォーカスを合わせる | 複数のプレーヤーが対戦チームの一人のメンバーを狙うこと。 | |
ヘイト | 敵の注意をひき、ほかのメンバーが動きやすくなるようにサポートすること。 | |
ヘッドショット | 敵の頭を撃ってダメージを与えること。 | |
マ行 | マズルフラッシュ | 銃口から放たれる光を指す。 |
めくり | ジャンプして相手の背中側に着地すること。 | |
ラ行 | リコイル | 射撃した時の銃の反動のこと。銃を使う際にはリコイルの大きさや向きを把握した上で射撃しないと、敵を倒せない。 |
リスポーン | 殺されたキャラクターが復活すること。 | |
アルファベット | Gg | 「good game」を略した言葉。良い試合のことを意味する。 |
Mb | 「my bad」を略した言葉。自分のミスを認める時などに使われる。 | |
Np | 「no problem」を略した言葉。チームメイトを励ます際などに使われる。 | |
Ping | データの送受信にかかる時間のこと。 | |
Sry | 「sorry」を略した言葉。謝る際に使われる。 | |
Ty | 「thank you」を略した言葉。感謝を伝える際に使われる。 | |
Wp | 「well played」を略した言葉。チームメイトを称える際などに使われる。 |
まとめ
eスポーツは今後も競技人口が増加傾向にあり、右肩上がりにファンを獲得してエンタメ界での存在感も増していくでしょう。
eスポーツ関連の大規模なイベントや大会が多く開かれれば、プロモーションやグッズ販売の機会も増えます。
ものづくりのトランスではイベントで販売するオリジナルグッズやノベルティグッズの作製、ターゲットの心を捉える販促プロモーション企画を手掛けています。
eスポーツをテーマとした取り組みや関連グッズ企画への参加を検討している企業担当者の方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談ください。
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藍生エイト
年々競技人口が増加しているeスポーツですが、その背景にはプロゲーマーではない芸能人や配信者などにもゲームが浸透しており、実況配信などを行っていることも要因の一つかもしれませんね。今後も市場が拡大すればオリンピック競技になる未来も、そう遠くないのではないでしょうか。
更新日:
株式会社トランス