ここ数年注目され続けているY2Kファッションの流れにおいては、ブランドロゴを大々的にフィーチャーしたり、ビビッドな色合いや柄を組み合わせたりと、華やかさ・派手さを重視したアイテムが目立ちます。
一方で、ロゴや柄の主張を抑え、色味もモノトーンにするなど、一見地味にも思えるようなデザインの潮流も盛り上がりを見せているようです。
本記事では、そんな控えめなデザインと、モノとしての上質さを掛け合わせたファッショントレンド、「クワイエット・ラグジュアリー(=静かな贅沢)」について解説します。
クワイエット・ラグジュアリーは主に高級ブランドが取り入れてきた考え方ですが、今後ノベルティやオリジナルグッズのデザインの傾向にも影響を与える可能性があるため、商品企画やマーケティングの担当者様は今のうちにチェックしておくことをおすすめします。
目次
クワイエット・ラグジュアリーとは
ブランドロゴを大々的にフィーチャーするような、派手さや華やかさに重きを置いたデザインとは対照的に、モノトーンを基調とした落ち着きのある色味と控えめなデザインで、アイテムが持つ機能性・上質感により比重を置く考え方です。
ミニマルで洗練されたデザイン性は、ともすると単に地味ととらえられる可能性もありますが、素材や仕立ての上質感、こだわり抜かれたディティールなどを通して、“分かる人には分かる”本物のラグジュアリーさをさりげなく表現することがクワイエット・ラグジュアリーの真髄と言えます。
クワイエット・ラグジュアリーの起源
クワイエット・ラグジュアリーは別名で「ステルス・ウェルス(=隠れた富)」「ディスクリート・ラグジュアリー(=控えめな贅沢)」とも呼ばれ、派手な身なりやブランドロゴ入りのファッションアイテムなどを通して富とステータスをアピールする必要がない、超富裕層のライフスタイルが起源とされています。
例えば、お金持ちが無地のシンプルな(しかし実は高額な)シャツを着ることなどを指し、昔からある普遍的な考え方のひとつです。
他者からの賞賛や羨望の目をもはやそれほど求めていない、“既に満たされている人々”から生まれたカルチャーであり、「見せびらかすことはクールではない」という価値観に基づいている部分もあるでしょう。
これらのことから、本来のクワイエット・ラグジュアリーの考え方でデザインされたアイテムには単体で存在感があるというよりもむしろ、アイテムを身に着ける人物が醸し出す自信や余裕と結びつくことではじめてファッションを完成させる、というような意味合いが込められていると解釈することもできそうです。
ファッショントレンドとしてのクワイエット・ラグジュアリー
本来のクワイエット・ラグジュアリーは上記の通り、完全に富裕層向きの考え方であると同時に、上質な素材や凝った仕様をコストの制約なく商品に落とし込みやすい高級ブランドだからこそ実現可能な考え方であるともいえます。
しかしその一方で、ブランドロゴを生地と同色にして目立ちにくくする、ブラックやホワイト、ベージュなどのベーシックなカラーで落ち着きを表現するなど、あくまでもデザインの手法・方向性としてクワイエット・ラグジュアリーの概念を部分的に取り入れるケースもあり、その場合は高級ブランドだけに適応される考え方とは言い切れないでしょう。
現に、スポーツブランドをはじめとした、いわゆるラグジュアリーブランドではない価格帯のブランドでも、ロゴの主張を抑えてシックな雰囲気にまとめたコレクションなどは珍しくありません。
2023年においては、富裕層のみを対象とするクワイエット・ラグジュアリー本来の意味合いに加えて、クワイエット・ラグジュアリー=ファッショントレンドという認識も浸透しつつあるようです。
クワイエット・ラグジュアリーの現在と今後
Y2Kファッションやロゴ入りアイテムの流行、SNSの台頭をはじめ、人目を引くような分かりやすい特徴と自己アピールが重視されがちな昨今の風潮において、一歩引いた控えめなスタンスを表明し、周囲にアピールするためではない実質的な価値を静かに追い求める、クワイエット・ラグジュアリー的なスタイルに心地よさを感じる方もいるはず。
周囲の評価や価値観に振り回されずに、自分の意思を尊重して行動することを指す「自分軸」という言葉が注目されているようですが、クワイエット・ラグジュアリーが内包するある種の“自己満足”に近い価値観との親和性が高く、「自分軸」と「クワイエット・ラグジュアリー」が同時期に多くの人々の関心を集めていることには必然性があるようにも思います。
派手さや華やかさが重視される風潮もあった2010年代カルチャーに対するカウンター(≠反動)として、2020年代は「クワイエット・ラグジュアリー(=静かな贅沢)」が見直され、今後さらに勢いを増していくのではないでしょうか。
クワイエット・ラグジュアリーが注目されている背景
クワイエット・ラグジュアリーに影響を受けたファッションアイテムは、価格帯・ジャンルを問わず多く登場していますが、ここではクワイエット・ラグジュアリーへの世間の注目度が高まっている背景について考察してみます。
2010年代はInstagramをはじめとしたSNSが全盛を迎え、ブランドロゴの総柄に代表される派手なファッションアイテムが「インスタ映え」することから人気を集めた時代でした。
また、ファストファッションブランド各社による目まぐるしいトレンドの移り変わりは、さまざまなファッションアイテムにスポットが当たるきっけにもなりました。
近年では、2000年代のトレンドを取り入れたY2KファッションがZ世代を中心に支持され、 華やかな雰囲気のファッションが依然として人気であることは間違いありません。
しかしその一方で、コロナ禍、世界的なインフレ、SNS疲れ、ファストファッション疲れなどのさまざまな要因が重なり、ロゴを見せつけることによるあからさまな富・ステータスの誇示や、注目されることを目的とした派手なデザインは一時の勢いを失い始めているようにも見えます。
さらに、SDGs・サステナブルに類する考え方が浸透し、「良いものをずっと使い続ける」「流行に左右されない魅力を持ったアイテムを選ぶ」といった消費行動にシフトしていると考えることもできるでしょう。
これらの風潮は、ベーシックでタイムレスなデザインと、長く使える品質の高さを兼ね備えたクワイエット・ラグジュアリー的なアイテムと相性が良く、ファッショントレンドとしてのクワイエット・ラグジュアリーが広まる追い風となっています。
また、クワイエット・ラグジュアリーの魅力が多くの人々に発見されたきっかけとして、2018年より放映の米ドラマ「メディア王 ~華麗なる一族~」の影響も見逃せません。
超富裕層である登場人物たちのシックでエレガントな着こなしは話数を重ねるごとに話題を呼び、今日のクワイエット・ラグジュアリーのファッショントレンド化に一役買ったとされています。
クワイエット・ラグジュアリーの要素をオリジナルグッズ製作に活かすためのポイント
クワイエット・ラグジュアリー的なデザインを形容するために使われる言葉は、ベーシック、シンプル、ミニマル、プレーン、シック、エレガント、コンサバティブ、ストイック、上品、地味など。
本来のクワイエット・ラグジュアリーにおいては、上記の言葉で形容されるようなデザインの特徴に加えて、上質な素材・こだわり抜いた仕様などが不可欠ですが、そのぶん価格が高価になります。
ここでは、“クワイエット・ラグジュアリーらしさ”を高級品以外のノベルティ・オリジナルグッズで表現する際のポイントをお伝えします。
シンプルさと上質感を兼ね備えたデザインはさまざまなシチュエーションに馴染みやすく、好みも分かれにくいため、多くの人が求めるベーシックなデザインのアイテムを展開したい方も参考にしてみてください。
アイテム
シャツ・帽子などのアパレルや、バッグ・ポーチをはじめとしたファッション雑貨は、無地であっても素材の違いが分かりやすいため、クワイエット・ラグジュアリーらしさを表現しやすいアイテムと言えるでしょう。
ほかにも文房具や食器類など、日頃よく使うものの多くにクワイエット・ラグジュアリーの雰囲気をプラスできます。
生地の質感や素材の光沢感、アイテム全体の色味などをコントロールすることで、実際の価格以上の上質感を演出することも可能です。
また、デザインの主張が控えめなアイテムはさまざまな服装やインテリアと合わせやすいため、常に一定の需要があります。
そのためクワイエット・ラグジュアリーらしいデザインのアイテムは、配布用のノベルティとしても喜ばれそうです。
ロゴ
ロゴの主張を抑え、いかにデザインに溶け込ませるかは、クワイエット・ラグジュアリー的な表現を考えるうえでとても重要なポイントです。
ロゴの存在感を薄めつつも、上質感やブランド感を表現できるベストなバランスを見つける過程で、さまざまなロゴの表現方法を検討する必要があります。
例えば、ロゴの色を生地や素材と同系色にしたり、型押しなどの凹凸でアイテムに馴染ませたりするのはよく見かける手法です。
また、ロゴを目立ちにくい部分にプリントしたり、金具部分に彫り込んだりと、名入れする箇所や方法もセンスが問われるポイント。
場合によっては、思い切って無地にしてしまうのもありです。
色・柄
ベージュ・ブラウン系ならナチュラルな上質感を、ブラック・グレー系ならシックでスタイリッシュな印象を演出できます。
特に色味に決まりはありませんが、過度に鮮やかなカラーは目立ちやすく、コーディネートから浮いてしまう可能性があるため、アイテムの色を決める際は良い意味での「地味さ」「無難さ」を意識してみましょう。
素材
本来のクワイエット・ラグジュアリーでは、ハイクオリティな素材・生地を使用することで、“分かる人には分かる”真の上質感を表現します。
とはいえ、一般的なオリジナルグッズ・ノベルティの場合、高額な材料を使うのは難しい場合がほとんどでしょう。
オリジナルグッズ・ノベルティでクワイエット・ラグジュアリー風の上質感を再現したいときは、素材の光沢感や凹凸の加工などに気を配り、高見えするよう工夫してみてください。
ロゴやデザインなど、ほかの要素との組み合わせによっては、高級品と見紛うようなアイテムに仕上げることも可能です。
まとめ
Y2Kファッションやロゴをフィーチャーするデザインなど、派手さ・華やかさを感じさせるファッションのトレンドが長く続いていますが、ここにきて注目され始めているのは「静かな贅沢」。
控えめなデザインと確かな品質の組み合わせは、見せかけだけではない上質さや”本物感”を感じさせます。また、トレンドに左右されないタイムレスなデザインは、Z世代を中心に見直され始めている「同じものを長く大切に使う」という価値観とも相性が良く、SDGs・サステナブル方面での訴求もしやすいのではないでしょうか。
現在、主に高級アパレルブランドで取り入れられているクワイエット・ラグジュアリーの考え方ですが、今後はロゴの主張をあえて控えめにするなど、デザインの傾向を抽出して取り入れる潮流が生まれそうな予感もあります。
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