企業活動を行う中で、どうしても発生してしまう廃棄物。捨てるしかなかったものを別の商品へと生まれ変わらせることで、思わぬ展開が生まれることがあります。
本来の目的では使えなくなってしまった素材や廃棄物をアップサイクルという形で再活用する取り組みは、サステナビリティの実現を目指すうえで注目度を増しています。ここでは、企業の本業から派生したアップサイクルへの取り組みが、新たなオリジナルグッズの誕生につながった事例やアップサイクル素材を活用したオリジナルグッズ等を中心にご紹介します。
目次
【自社関連】自社と関連する廃材を使ったアップサイクル事例5選
本業を営む中で発生する廃材を生かして、魅力的な商品にアップサイクルしている企業事例をご紹介します。
カンロ
出典元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000248.000041274.html
カンロ飴やピュレグミなどで人気のカンロでは、製造過程の中で発生する規格外の飴を、異業種企業の協力のもと、アロマスプレーやマスクスプレーなど日用品の素材にアップサイクルしています。
アロマスプレー
出典元:https://www.kanro.co.jp/ir/management/business/
循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現を目指す取り組みの一環で、研究開発型のスタートアップ企業・ファーメンステーションの技術によって規格外の飴を発酵・蒸留することで、高純度・高品質のエタノールを精製します。不純物の少ないカンロの飴は再活用に向いており、アロマスプレーのほかハンドスプレーやせっけん、ウェットティッシュなどの素材としてもアップサイクルしています。
キャンディーストロー
出典元: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000248.000041274.html
また、キャンディーでできた「食べられるストロー」を提案しているストローマエストロ・野村優妃さんと協業し、飴を活用したエコストローも製作。飴製品以外にも糖が活用される可能性を広げ、新しい価値を発信しています。
ミツカン
お酢や調味料で知られるミツカンでは、環境負荷の低い食生活の実現を目指して「ZENB」というブランドを推進しています。植物性原料の中でも、窒素肥料を多用せずに栽培できる豆に着目し、栄養豊富な食材として注目の高い黄えんどう豆を使った世界初のロング麺商品などを開発しています。
ZENB
出典元:https://zenb.jp/
通常は廃棄されてしまうものの、実は栄養価の高い植物の芯や皮、種の部分も丸ごと味わえるように加工が施されているのが、ミツカン「ZENB」の特徴です。主食となる麺をはじめ、メインとなるパスタソースやカレー、自然な甘さを楽しめるスイーツスナックなど、ラインナップも豊富です。動物性原料や添加物に頼らず、素材のうま味と栄養を引き出す技術は、自身の健康や環境について配慮している消費者から厚く支持されているうえ、食品メーカーによるアップサイクルを通じたウェルビーイングな新しい食生活を提案する取り組みとして、業界内外からも注目を集めています。
アーバンリサーチ
メンズ・レディースウェアの企画販売製造を行うアーバンリサーチでは、異業種協働による廃棄衣料のアップサイクルブランド「commpost (コンポスト)」を展開しています。
「commpost (コンポスト)」
出典元:https://www.urban-research.co.jp/special/commpost/
アーバンリサーチと、素材分別が難しい廃棄繊維を色で分けてアップサイクルするシステムの開発・研究を手掛けるチーム「カラーリサイクルネットワーク」との協働によるアップサイクルブランドです。今までは廃棄されてきた衣料を素材として、バッグやスマホケースなどの、サステナブルマテリアル・プロダクトを世に送り出しています。
生産にあたっては、大阪府のNPO法人・暮らしづくりネットワーク北芝と協働し、障がい者をはじめとする就労困難者の雇用を図っています。
ANA
ANAグループは、サステナビリティへの取り組み「ANAアップサイクルプロジェクト」を実施しています。
「ANAアップサイクルプロジェクト」
出典元:https://www.anahd.co.jp/group/pr/202211/20221110.html
こちらはANAがオンワード商事とともに開発したルームシューズです。廃棄予定の飛行機客席シートカバーを生地に採用しています。また、トートバッグ専門ブランド・ルートートとの共同開発でANA整備士の作業着をアップサイクルしたバッグなども販売し、廃棄物の削減や資源の有効活用に積極的に取り組んでいます。こうした姿勢とともに、アップサイクルを通じて開発されたオリジナルグッズのユニークな魅力で、航空ファンをはじめとした幅広い層の消費者の心をつかんでいます。
島村楽器
島村楽器では、アップサイクル品の販売を行う団体などと提携して、楽器アップサイクルプロジェクトを進めています。
「楽器アップサイクル」
出典元:https://www.shimamura.co.jp/p/csr/upcycleproject/index.html
修理不能な楽器や耐用年数を過ぎた部品を、スタンドライトやサイドテーブルの素材としてアップサイクルし、島村楽器店舗やオンラインストアで販売しています。故障したり、長年使われていなかったりなどで本来は廃棄品となる楽器の再活用を図ると同時に、利益の一部を活用して国内外の子どもたちに楽器の寄贈も行っています。
【素材活用】アップサイクルされた素材によるオリジナルグッズ作製事例3選
次にご紹介するのは、他業種で発生する廃棄物などを素材の一部に活用し、あらたな製品を生み出すアップサイクル事例です。他業種と連携した上でアップサイクル素材を調達し、魅力的なオリジナルグッズを作製しています。
コクヨ
トレンドを取り入れながら自分らしさを表現する文具シリーズとして人気のコクヨ「KOKUYO ME」。一部アイテムに、廃棄衣料をアップサイクルした素材を使っています。
KOKUYO ME(コクヨミー)
出典元:https://www.kokuyo.co.jp/newsroom/news/category/20211130st2.html
多くが焼却ごみとして処理される廃棄衣料が、ノートカバーやメモカバー、ツールポーチとして生まれ変わり、アップサイクル素材ならではの風合いを持つ商品としてラインナップされています。
ネオクリッツ
出典元:https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/neo-critz/
業界を超えて海洋プラスチックごみ問題を考える一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUEと連携して、廃棄される漁網を原材料の一部としてアップサイクルした生地を採用したペンケース「ネオクリッツ」も人気です。コクヨはこのような事業を通じて、持続可能な社会実現に向けた取り組みと、同社の商品とを組み合わせ、魅力的なアップサイクル商品の開発を実現しています。
アサヒユウアス
ビールなどの飲料や食品を販売しているアサヒグループのサステナビリティ事業を展開するアサヒユウアスは、グループのステークホルダーと連携して、サステナブルな商品やサービスの開発に取り組んでいます。
森のタンブラー
出典元:https://www.asahi-youus.com/
実績のひとつに、アサヒビールモルトの麦芽副産物や間伐材などを主原料とした世界初のエコタンブラー「森のタンブラー」(パナソニックと共同開発)があります。
森のタンブラーは、地域の素材を使ったバリエーションが展開されています。アサヒビールがオフィシャルスポンサーを務めるプロ野球阪神タイガースとの協業では、廃棄されるバットを素材とした「森のタンブラー for 阪神タイガース」も限定販売。阪神タイガースの選手が使用して折れたバットのアップサイクル品として、ファンをはじめとした幅広い層からの注目を集める取り組みとなりました。
凸版印刷
凸版印刷では、化粧品メーカーの研究・開発過程などの中で発生する、市場に出せないパウダー化粧品原料を色材として再活用する取り組みを進めています。
「ecosme ink®」
出典:https://www.toppan.co.jp/news/2022/10/newsrelease221025_2.html
廃棄予定の化粧品原料を管理する企業・モーンガータから素材を調達し、東洋インキにインキ製造を委託した「ecosme ink®」は、化粧品販促物やパッケージに使用されます。化粧品原料特有のラメ・パール感が生かされたインクを使った販促物などを化粧品メーカーに販売することで、業界全体のアップサイクル推進を図っています。
アップサイクルが生み出す企業の新たな可能性とは
アップサイクルは、廃棄される予定のものや不用品を素材として生かし、新しい製品をつくる取り組みを指します。単に形が変わるだけでなく、新しい価値が付与された製品にアップグレードしていることがポイントです。
廃棄物や不用品を粉砕・融解して原材料の状態に戻してから再活用を図るリサイクルと比べると、廃棄物などの形や質感を残した状態で新たな製品となることで個性あるオリジナルグッズが生まれやすいという背景があります。
アップサイクルを進めるメリットとして、以下のような新しい可能性が期待されます。
新たなビジネス形態の派生・発生
企業活動を営む中で当たり前に廃棄してきたものを見直して、新たな製品へ生まれ変わらせる取り組みが、新たなビジネスにつながることがあります。
アップサイクルによってできた製品の付加価値が高ければ高いほど、消費者の注目も上がり、売り上げも期待できます。またアップサイクル品の開発を通して他業種との協業が進むと幅広いネットワークが築かれるため、コラボ商品の企画や新しい事業提携といった多くのビジネスチャンスが生まれる可能性があります。
企業イメージの刷新・新たなファン層の開
アップサイクル品の開発に経費がかかり、結果的に利益を生み出せなかったとしても、多数の消費者の関心を引きつけるきっかけになります。
「アップサイクル事業を展開している企業である」という情報が広まることで世間的なイメージアップや、SDGsに関心がある若年層などのファン開拓につながる可能性も期待されます。従来の企業活動のみではリーチできていなかった層からの好感度を獲得するチャンスになり得るのです。
市場の活性化
廃棄物や不用品を捨ててしまう前に「何かに使えないだろうか」と検証し、結果新たな製品が誕生すればアップサイクル市場への参入につながります。企業活動に限らず、アップサイクル市場全体の活性化にも貢献する取り組みになり得ます。
まとめ
SDGsやサステナビリティへの意識の高まりにより、限りある資源を使い捨てる時代から持続可能性の高い素材をチョイスして生産・消費する時代へのシフトが着実に進んでいます。
いまだに企業の生産現場や消費活動の中でおびただしい量の廃棄物が発生している現在、「捨ててしまえばただのゴミでも、アップサイクルすれば新たな価値を持つモノに生まれ変わらせることができる」という考えは、ますます関心を集め、消費者にとって魅力的に受け入れられるであろうことが予測されます。
モノづくりを手掛けるトランスでは、エシカルな視点を盛り込んだセールスプロモーション施策やオリジナルグッズの開発・製作も進めています。サステナブルな素材の調達やトレンド分析を取り入れながら、各企業様のアイデアを形にするお手伝いを進めることができますので、まずはお気軽にご相談ください。