ステマ(ステルスマーケティング)が法律により規制の対象となりました。
しかし、実際にどのような広告や表示が規制の対象となるかわからない、または法律違反にならないために何をすべきかわからないという方もいるでしょう。
この記事では、ステマ規制の概要や、ステマ規制の対象となる広告・ならない広告の具体例などを解説していきます。
ステマ規制への違反を避けるための対策方法もご紹介しますので、参考にしてみてください※。
内容は2023年12月14日執筆時の情報になりますのでご注意ください。
目次
ステマ規制とは?【2023年10月1月施行】
2023年(令和5年)10月1月から、ステルスマーケティング(ステマ)が景品表示法違反となりました。
景品表示法とは消費者庁が所管するもので、大袈裟な表示や虚偽の表示、または豪華すぎる景品類の提供によって、消費者が良くない商品を買ってしまうことから保護する法律です。
ステマが行われると合理的に商品を選べなくなるため、消費者が不利益を被る可能性が高まります。
消費者を守るために、ステマが規制対象となりました。
ステマ規制のポイント➀
ステマ規制は事業者に向けた規制であり、違反した際の懲罰は事業者に課せられます。
なお、規制や懲罰の対象は事業者のみであり、依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は、規制の対象外です。
ステマ規制のポイント➁
ステルスマーケティング(ステマ)の規制が法律に追加されるのは2023年10月1日からですが、規制は2023年9月30日以前の表示も対象となります。
そのため、事業者は過去に出したことのある広告の内容に対しても対策をする必要があります。
ステマ(ステルスマーケティング)とは
ステマ(ステルスマーケティング)とは、広告と明らかにしないまま商品やサービスの宣伝をすることを指します。
別名でアンダーカバーマーケティングともよばれ、古くは店舗や商品があたかも人気であるかのように見せかけるために用意する偽客=“サクラ”や、特定の商品・サービス・人物の印象が良くなるように書かれたブログ・口コミ・記事=“提灯記事”などの手法もステマに該当する場合があります。
景品表示法においてはステマを、「一般消費者が事業者の表示であることを判別するのが困難である表示」と記載しています。
ステマはインターネットが普及する以前から存在しますが、インターネットが身近になり、ブログやYouTube動画、ECサイトのレビューなどを通じて個人でも容易に情報を発信できるようになってからはより問題視されるケースが増えており、2012年には「ステマ」が流行語大賞の候補に選ばれました。
ステマは主に「なりすまし型」と「利益提供秘匿型」の2種類に大別できます。
両者について表にまとめました。
内容 | 事例 | |
---|---|---|
なりすまし型 | 事業者による表示であるにもかかわらず、第三者を装って肯定的な意見を掲載する表示 | 企業の従業員が身元を隠し、個人のSNSで自社の商品を褒める |
利益提供秘匿型 | 事業者が第三者に金銭の支払いなど経済的な利益を提供して表示させていることを、明らかにしない表示 | 著名なブロガーやインスタグラマーが報酬を得ていることを明示せず、商品やサービスについての良い評価を発信する |
景品表示法にステマ規制が追加された背景
ステマという言葉が世間に浸透するきっかけとなったのは、2012年のペニーオークション詐欺事件でしょう。
ペニーオークションは、入札する度に運営会社に手数料を払う形式のオークションサイトでした。
少額の入札を繰り返すことにより、手数料が多額になるような仕組みでしたが、会員を装ったbotが入札を行い、入札金を引き上げて会員から手数料を取っていたとして詐欺罪で起訴されました。
また、芸能人らが運営会社から報酬を得ながら「ペニーオークションで安く商品を落札できた」と広告だと明らかにしないまま宣伝行為をする、いわゆるステマを行っていたことも問題となりました。
これをきっかけとして、社会的に「ステルスマーケティング」という概念が浸透したのです。
その後も、SNSの浸透によりステマに対する世間の問題意識は高まっていきます。
世界的にステマを規制する流れになる中、消費者庁は2022年の9月に景品表示法における「ステルスマーケティングに関する検討会」を設置します。
ただし、当時の景品表示法での規制対象は「優良誤認表示」「有利誤認表示」に限られており、そのどちらにも該当しない表示を規制することはできないという問題点がありました。
景品表示法が目的としているのは「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為」を規制することです。
検討の結果、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すステマ行為は、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する恐れがある行為に該当するため、規制が必要だという結論に至りました。
ステマ規制の対象となる広告や表示
実際にはどのような広告や表示が、ステマ規制の対象となるのでしょうか。
ステマ規制の対象となる広告の表示について、内閣府は令和5年3月28日内閣府告示第19号「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」にて以下のように告示しています。
事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの
引用:消費者庁|一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
つまり、事業者が仕組んだ広告であることが消費者にとって見抜けないようになっている広告を、ステマと定めています。
具体的には、以下のような広告の表示がステマ規制の対象となります
- 事業者の社員・事業者の子会社の社員が行った広告や表示
- 事業者が第三者に明示的な依頼・指示をしていない広告や表示
- 事業者による表示であることが伝わりづらい広告や表示
それぞれどのような表示かを解説します。
事業者の社員・事業者の子会社の社員が行った広告や表示
事業者の社員や子会社の社員は、事業者と一体と認められる場合があります。
そのため、社員や子会社の社員が、会社との関係性を隠しながら宣伝を行うことは、ステマに該当する可能性が高いです。
その社員が事業者に該当するかどうかは、事業者内における権限や担当業務、地位などを総合的に考慮して判断されます。
具体的な事例
- 商品の販売を担当する社員が、販売促進のためにInstagramなどのSNSに商品画像や商品に肯定的な文章を投稿する
- 商品の販売を担当する社員が、競合商品と自社製品を比較し、優れた自社製品に対して競合商品が劣っている、または価値が低いという内容を口コミサイトに投稿する
事業者が第三者に明示的な依頼・指示をしていない広告や表示
事業者が第三者に明示的に依頼や指示をしていない場合も、場合によってはステマに該当することがあります。
例えば、投稿内容は指示していないけれども、事業者が口コミの投稿者に対価を渡している場合などは、実質的には肯定的な意見を促していることになるのです。
事業者が第三者にはっきりと指示をしていない表示がステマに該当するのかどうかは、以下の3点が判断材料となります。
- メールなどを用いた事業者と第三者のやり取り
- 対価の内容や目的
- 事業者と第三者の関係性
具体的な事例
- 事業者がSNSで注目を集めるインフルエンサーに対し無償で商品を提供して、商品の使用感についてのSNS投稿を依頼し、インフルエンサーが商品を肯定する内容の投稿を行った
- 事業者がインフルエンサーに対して、経済的・金銭的に利益があると示唆し、そのインフルエンサーが事業者の商品についてポジティブな内容の投稿を行った
事業者による表示であることが伝わりづらい広告や表示
事業者による広告・宣伝であるにもかかわらず、それが消費者に伝わりづらくなっているものも、ステマに該当します。
事業者による表示や、事業者が第三者に依頼した表示の場合、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言を用いると、事業者による表示であることが明瞭だと判断されます。
しかし、例え「これは広告です」や「PR」と広告内に書かれていたとしても、文言の大きさや位置が目立たないようになっており、消費者が広告だと判別できないものは規制の対象です。
具体的な事例
- 事業者が、事業者名を名乗らないX(旧Twitter)アカウントで商品を誉める投稿をした。ハッシュタグ「#Promotion」を付けて広告であることを表記してはいるものの、英字表記に加えて、さらに大量のハッシュタグを付けることで広告であることを判別しにくくしている
- 事業者が人気ユーチューバーに商品の宣伝を依頼し、ユーチューバーは動画内で商品を褒めた。しかし、動画内で「これは広告です」と表記したのは数秒間であった
ステマ規制の対象にならない広告や表示
事業者が商品を宣伝すること、または第三者に宣伝を依頼すること自体は、法律違反ではありません。
ステマの規制対象とならないのは「一般消費者が事業者の表示であることを明確に判断できるもの」です。
つまり、事業者による広告であるとわかりやすい形で明記されているものはステマの規制にはなりません。
なお、消費者から見て、社会通念上、広告だとすぐにわかるようなものは、告示の規制対象外です。
例えば、企業名を出しているテレビCMは「これは広告です」と明記しなくても法律違反にはなりません。
以下に、ステマ規制の対象とならないものを挙げます。
【ステマ規制の対象にならない広告や表示の例】
- テレビCM(広告と番組が切り離されている表示)
- 「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」という、広く一般的に使われる文言をわかりやすく記載した表示
- 事業者が協力している番組や映画において、スポンサー名をエンドロールなどで明示している表示
- 事業者自身のSNSアカウントやウェブサイトを通じた表示
- 商品やサービスの紹介自体を目的とした、雑誌や出版物における表示
参照:消費者庁|景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック
ステマ規制の違反による罰則
ステマ規制に違反した事業者には、消費者庁から行為の撤回及び再発の防止を命じる「措置命令」が下されます。
措置命令に従わない事業者は刑事罰の対象となり、2年以下の懲役または300万円以下の罰金のいずれか、または両方が科されます。
ステマ規制の違反を避けるための対策
知らず知らずのうちにステマ規制を違反しないよう、事業者はステマにならないような表示を意識しましょう。
事業者ができる対策としては、以下のようなものが挙げられます。
- 広告であることを明記する
- 社員向けにSNS投稿に関するルールを設ける
- 第三者に自社の商品・サービスを無償提供した場合は、その旨を明記してもらう
広告であることを明記する
広告であることを隠した宣伝が規制対象であるため、事業者は広告であることを明記するように気をつけましょう。
具体的には、テレビやネット、新聞、雑誌などすべての媒体において広告・宣伝を行う際に、「広告」「宣伝」「PR」といった表示を行います。
また、このような文言は一目見た瞬間に消費者に伝わるように、読みやすい大きさや色の文字にすると、事業者の表示であることが伝わりやすいです。
社員向けにSNS投稿に関するルールを設ける
自社の広報担当者や営業担当者などが、個人のアカウントで自社商品を褒めるようなSNSの投稿を行った場合もステマとなります。
そのような事態を防ぐために、社員向けにSNS投稿に関するルールを設けましょう。
匿名のアカウントでも規制対象となるため、もし自社商品をSNSで紹介するのなら、企業名や本人の役職・立場を明らかにした上で、自社商品の紹介であることを明記するなどしましょう。
社員がステマをしてしまわないような具体的な対策方法を定めるのです。
また、定めたルールを周知するために、冊子を作って配ったり、SNS運用に関する研修を行ったりすると効果的です。
第三者に自社の商品・サービスを無償提供した場合は、その旨を明記してもらう
YouTuber、インスタグラマーなどのインフルエンサーや芸能人をはじめ、第三者に自社の商品・サービスを無償で提供した場合、良い評判を促したとして、これもステマに該当する場合があります。
無償で提供した相手には、商品に関するSNS投稿を行う際にハッシュタグ「#pr」を付けるなど、宣伝要素のある投稿であることを明記するように伝えておきましょう。
ステマ規制に関してのよくある質問
ステマ規制を管轄しているのはどこですか?
ステマ規制は消費者庁の管轄となります。
アフィリエイトとステマの違いは何ですか?
ステマは、事業者による広告であることを隠した商品・サービスの宣伝です。
一方、アフィリエイトは、ユーザーが広告から商品を購入した際に、広告主に対して一定の報酬が支払われる成果報酬型の広告です。
ステマ規制でアフェリエイトは規制されますか?
アフィリエイト広告も広告だと明示しなければ、ステマ規制法の対象となります。
ステマは自分で買ったものも対象ですか?
一般消費者が事業主の依頼を受けず、自分で購入した商品について自らの感想などを発信することは、ステマに該当しません。
ただし、依頼がなくても、事業者が内容を指示している場合や、事業者から金銭などを提供されている場合は、ステマとみなされます。
SNSでのステマ規制の対応策は何ですか?
SNSにおけるステマ規制の主な対応策は以下の通りです。
- 事業主が、自社の商品・サービスの宣伝を含んだ内容の投稿をする際は、広告であることをわかりやすく表示する
- 第三者に商品やサービスの宣伝・口コミを発信してもらう際、発信者(第三者)と事業者の関係を明示してもらう
- 自社社員に対し、SNSに関する社内ルールを設け、周知する
- 2023年9月30日以前の投稿も、広告であることを明示する
まとめ
2023年10月1日より、広告であることを隠して宣伝する「ステルスマーケティング」が景品表示法で規制されました。
規制対象には過去の表示も含まれ、事業者は法律に違反しないように、表示が自社の広告であることを明示しなければなりません。
規制の対象となるのは事業者であり、インスタグラマーなどの第三者は規制の対象外です。
事業者は第三者に依頼して口コミの投稿をしてもらう際や、無償で商品・サービスを提供する場合には、投稿内容がPRである旨を記載するようにしてもらう必要があります。
また、事業者の元で働く社員が身元を明らかにしないアカウントで自社商品の宣伝を行った場合もステマに当たります。
自社社員にはSNS投稿関連のルールを設置するなどして、法律違反を未然に防ぎましょう。
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