「サブスク」というと、映画や音楽の配信というイメージがあります。しかし最近では、多岐にわたるサブスクのサービスが登場し、エシカルなサービスも続々と登場しています。
この記事では、エシカルなサブスクについて、実例を交えて解説します。エシカルなサービスを展開する場合のヒントも最後にまとめました。ぜひご一読ください。
目次
今の時代はサブスクもエシカル消費で!
昨今サブスクのサービスも多様化が進み、消費者はサブスクを通じてエシカル消費を行うことが可能になってきています。サブスクというと映画や音楽などエンタメ系の配信というイメージが強くあります。実際、「知っているサブスクのサービスは?」と聞かれると、多くの方が「Netflix」「Spotify」などを挙げるのではないでしょうか。しかし、トレンドはそれにとどまらない広がりを見せています。エシカル消費もその1つです。
サブスクとエシカル消費は一見関係なさそうですが、親和性の高い部分もあります。まず「エシカル消費」と「サブスク」とはどんなものか確認しましょう。
最近注目されている「エシカル消費」とは
「エシカル消費」とは、人や社会・地域・環境に配慮された商品やサービスを選択して消費することをいいます。具体的な例をあげると、主に生産者の人権や労働環境、貧困の解決や平和、地域の活性化や雇用、エネルギーや気候変動などの改善や維持につながる消費のことです。
「エシカル(ethical)」とは「倫理的な」という意味の英単語です。つまり、エシカル消費とは、「購入・利用することで倫理的に好ましい結果をもたらす消費」を意味します。
多様化が進む「サブスクリプション」とは
そして「サブスク」は、定期的に料金を支払うことでサービスを受けられる仕組み・ビジネスモデルのことをいいます。実際の使われ方としては、ビジネスモデルだけでなく「定額制のサービス」を指す「サブスクリプションサービス」を指すことが多くあります。もともとは「定期購読」を指す英語「サブスクリプション(subscription)」を略した言葉です。
今までにも、定額制・リース・レンタルなど、サブスクに似たサービスがありました。共通する面もありますが、それぞれ違いもあります。
定額制との違いとしては、サブスクの方が解約や交換がしやすいという点が挙げられます。サブスクの方がより「顧客満足度」を追求する傾向が強いともいえます。
リースは比較的高価なものを長期的に貸し出すことですが、サブスクは高価なものとは限りません。また定額制同様に、サブスクの方が途中解約しやすく、リースは場合により違約金が発生するといった違いもあります。
レンタルは比較的短い期間貸し出すことで、返却することが前提です。サブスクは長期的に借り続けたり、買取や交換も可能な点が異なります。
サブスクサービスの例としては、提供する内容により下記のように分かれます。
- 情報を提供(電子書籍など)
- 娯楽などのコンテンツを提供(音楽、映画など)
- 物を提供(食品、花など)
- サービスを提供(美容院など)
- 物を貸出す(洋服、バッグ、家具、家電など)
物品を定期購入するようなサービスから、モノやコンテンツを共有・利用できるサービスまで多岐にわたります。
エシカル消費やサブスクが注目されている理由
エシカル消費やサブスクが注目されている理由はいくつかあります。
まず消費の傾向が「所有」から「利用」に変化しつつある点が挙げられます。モノなどを購入して自分のものとすることよりも、必要な機能が必要な時に使えるだけでよいという考え方が強くなってきています。
所有しないということは、使わなくなったら捨てるのではなく返却するということでもあります。それはリユースやリサイクルの発想につながります。実際にレンタル形式のサブスクを利用する人は、サブスクのサービスにモノを捨てないサステナブルな取り組みを期待しているというアンケート結果もあります。
また政府が101億円もの予算を計上し、環境省が推進する「グリーンライフポイント」では、「服のサブスクリプション(定額利用)の利用」などに取り組む企業・地域を発行対象としており、エシカル消費を制度的に後押ししています。
これらのような理由により、モノを購入せず利用するサブスクや廃棄を伴わないエシカル消費が注目されています。
エシカルなサブスクの事例7選
次に、実際に行われているエシカルなサブスクにはどのようなものがあるのか、事例をまとめます。この記事では次の事例について紹介します。
- 【商品自体が環境に優しい】SANU 2nd Home
- 【商品自体が環境に優しい】Grino
- 【フードロスの解決】ロスゼロ不定期便
- 【フードロスの解決・パッケージレス】DAYLILY エシカル定期便
- 【パッケージが環境に優しい】NOSH
- 【フェアトレードや支援】アフリカローズ
- 【レンタルでゴミ削減】Laxus
このように多様なサービス内容のサブスクがあります。さまざまな角度からエシカルなサブスクをご紹介します。
【商品自体が環境に優しい】SANU 2nd Home
引用元:https://2ndhome.sa-nu.com/
「SANU 2nd Home」は一言でいうと、別荘のサブスクです。月額料金を支払うことで、北軽井沢や白樺湖、河口湖など比較的都内から近い場所のキャビンが利用できます(ピークシーズンや週末は滞在日数に応じた宿泊費もプラス)。気軽に豊かな自然の中でゆったりとした時を過ごすことができ、2022年5月現在会員枠が満席となっているほど人気のサービスです。
「自然に触れ合う人を増やし、好きになってもらうこと」「自然への負荷を最小限にした開発を行うこと」という2つのアプローチを行っており、後者にエシカルな姿勢が表れています。
具体的には、建設に関するCO2の削減やコンクリート使用量の削減など、自然環境への負荷を最小化した工法でキャビンを建築しています。また資材の再利用に備え、キャビンは資材を壊さずに解体できる独自の設計となっています。
【商品自体が環境に優しい】Grino
「Grino」は、調理済みの冷凍食品を提供するサブスクリプションサービスです。植物性食品(プラントベースフード)を提供しており、その点がエシカル消費に深くかかわってきます。
肉食用の家畜の飼育には、大量の水が必要です。また家畜の呼吸によるCO2排出量は交通機関並みだともいわれます。さらに飼育のためには広い土地が必要です。そのため、居住地の選択に影響を与えて貧困の原因にもなる可能性があります。肉食のために家畜を飼育することが、環境への負荷となったり貧困を生んだりしうるのです。
しかし菜食が広がると、そういった資源や環境の問題が改善されるでしょう。同社では持続可能な社会の実現のために植物性食品を提供しています。さらに包装・同梱物を最低限にしたり、売上の一部を森林保全団体『一般社団法人more trees』に寄付するなどの活動も行っています。
【フードロスの解決】ロスゼロ不定期便
「ロスゼロ」のサブスクは、規格外品や過剰在庫となっている食料を定期配達してくれるサービスです。日本で生まれるフードロスのうち約1/4が販売の前に発生しているといいます。ロスゼロでは、そのままでは廃棄となる、いわば「フードロス予備軍」を商品化しています。こちらでは賞味期限以前のものを取り扱っています。またサービスの特性上毎回商品の内容は変わり、選択や指定は不可となっています。
1度の配達で約3~5kgのフードロス削減につながり、廃棄・焼却する際のCO2排出なども削減が可能となります。また売上の一部は子ども食堂・途上国支援のために寄附され、フードロス対策以外にもエシカルな活動に寄与できます。
東急百貨店本店でサブスク申し込みを受け付けて話題にもなりました。サブスク事業のほか、未使用食材を使ったスイーツ製造なども行っています。
【フードロスの解決・パッケージレス】DAYLILY エシカル定期便
「DAYLILY」は台湾でスタートした漢方のライフスタイルブランドで、コスメや雑貨・食品などを販売しています。大阪や東京に実店舗も構えています。
そしてサブスクのサービスとして、お茶やちょっとした間食になるような商品の定期便を行っています。対象商品をパッケージレス(箱や缶なし)で配達するサービスです。また商品の変更ができるうえ、回数の縛りがないので、必要なものを必要な分だけオーダーすることができます。
パッケージレスの実現・ロスの出ない量り売り形式のような仕組みにより、ゴミやフードロスの削減など環境への負荷を減らすことができます。そのほか、同社では売上の一部をエシカル活動(募金・植林など)に当ており、より多角的な活動に貢献することができます。
【パッケージが環境に優しい】NOSH
引用元:https://nosh.jp/package-202106
「NOSH」は冷凍弁当・惣菜の宅配サービスで、業界最大手の1つです。低糖質・塩分管理された健康に良いメニューと味で高い評価を受けています。
同社ではパッケージに「パルプモールド素材」を使用しています。パルプモールド素材は脱プラスチックの流れで注目されている素材で、古紙やサトウキビの繊維などを原料に作られます。NOSHでは、パルプモールド素材の中でもサトウキビの搾汁後の粉を使った「バガス素材」を使用。燃やしても有害な物質が発生することがなく、もし放置されても土壌で分解され自然に還る素材です。自然環境に負荷がかかりません。
また印刷は有機溶剤の含有量が限りなくゼロに近い「水性フレキソ印刷」を採用し、化学物質の排出を抑制しています。乾燥にかかるエネルギーも大幅に少なくて済み、CO2排出量も低減できる印刷方法です。
【フェアトレードや支援】アフリカローズ
「アフリカローズ」はケニアからフェアトレードで購入したバラを販売しており、東京の広尾や六本木ヒルズに実店舗を構えています。同社のサブスクは、そんなフェアトレードのバラが定期的に届くサービスです。アフリカローズでは、フェアトレードのバラという事だけでなく、品質にも強いこだわりをもっており、鮮やかな色彩やたくましい生命力を感じられる、最高の品質のバラが届きます。
ケニアでは、輸出が許可される農園となるためには農業省が定める条件をクリアしなければなりません。その条件として、働く人の人権や労働環境を守るために労働条件が過酷でないことが求められます。たとえば児童労働がないことや、農薬を散布している間はハウスから出ることなどです。もちろん同社が提携している農園はこれらの条件を満たしています。そればかりか、スタッフの無料クリニック・無料食堂の制度や地域貢献の活動にも取り組んでいます。そのほか生産時のゴミの再利用なども行っている農園です。
さらに同社ではカーボンオフセットにも対応しているほか、綺麗なまま廃棄されてしまう「ロスフラワー」をドライフラワーにするサービスとも連携しています。
【レンタルでゴミ削減】Laxus
「Laxus(ラクサス)」は、ブランドバッグが使い放題になるシェアサービスです。ブランドにかかわらず月額定額制で利用でき、返却期限もありません。使っていないバッグを同社に貸し出し、サブスク利用されるとオーナーにも収入が生まれる仕組みもあります。さらにバッグが気に入った場合、オーナーと交渉が成立すれば購入も可能です。
このように利用者間でバッグが循環・利用される仕組みができあがっています。所有ではなく共有することにより、「オーバープロダクション(過剰生産)」に伴うゴミ廃棄の問題を改善することができます。事実、同社ではサービス開始以来バッグの廃棄ゼロを達成しています。
そのほか、バッグの配送も新品の箱とリユース配送箱とが選択可能で、約8割がリユース配送箱を選択していると発表されています(サービス開始後1か月時の割合)。そのほか緩衝材もプラスチック製からリサイクルの紙製へ転換を図るなど、バッグ以外の面でもゴミの削減に取り組んでいます。
エシカルなサブスクを提供する際のポイント
上記の事例から得られる、エシカルなサブスクを提供する際のポイントを考えてみましょう。まず大前提として、どの事例も商品やサービスの品質が高く魅力的なものばかりです。品質へのこだわりや高い利便性に加えて、エシカルな要素を兼ね備えていると言えます。ご紹介したサービスのエシカルな面は次のように分類できます。
- 商品そのものがエシカル
- パッケージなど付属品がエシカル
- 仕組みがエシカル
そのほか、売上の一部を寄付している例も多くありました。
これらを踏まえると、次のようなエシカルなサブスクが考えられます。
- エシカルな商品を定期的に提供(例:フェアトレード、製造方法・素材などがサステナブル、障がい者支援につながるなど)
- 商品の包装や梱包をエシカルにして提供(例:梱包資材がサステナブル、「通い箱」のような方法を採用など)
- 自社商品を貸し出す・配信する(例:モノ・デジタルなデータ)
- ドネーションプログラムと組み合わせる(例:環境保全活動、社会的弱者の支援など)
- エシカルな取り組みをしている企業と提携する(例:賞味期限が近づいた食品の提供など)
自社商品のモノを貸し出したり共有したりすることは、その仕組み自体がエシカルです。デジタルデータを配信するビジネスモデルでも、紙やコンテンツを保存するメディアの節約になります。また、エシカル消費と接点がない商品を扱っていたとしても、エシカルな取り組みをしている企業と提携する方法もあります。
まとめ
以上見てきたように、エシカルなサブスクはさまざまな形が考えられます。今後、持続可能な社会のためには企業としてもエシカルな取り組みがますます求められるようになっていくことでしょう。現在注目を集め今後も拡大すると考えられているサブスクサービスと結びつけることができれば、事業としての成長も見込めます。エシカルな事業を安定的に継続できることは、社会にとってもメリットとなります。
またもしも自社商品にエシカルな面がなかったとしても、プロモーションやエシカルな活動をしている企業や団体と提携することでエシカルな取り組みが可能となります。トランスでは、サステナブルなグッズ作成やエシカルな取り組みをしている企業とのアライアンスも行っています。貴社のエシカルな取り組みのお手伝いができますので、まずはお気軽にご相談ください。